戦略コンサルタントの「基本流儀」

とある新規事業戦略立案プロジェクト。懇意にさせていただいていた担当常務(当時)の言葉です。

「田村さん、コンサルタントはすぐに『(同業他社や他業界での)成功事例』とか、『勝ちパターン』とかを語りたがりますよね。『北米の○○という企業では……、欧州の△△という企業では……です。そして、ここから言えることは、□□事業を成功させるカギは◇◇にあるということです』、というような感じで。でも、私はそういうのに興味ないんですよ。それって、因果関係を語っているようで、実は多くの場合『まやかし』ですから(※筆者注)。『成功事例』じゃなくて『失敗事例』を教えてください。『勝ちパターン』じゃなくて『負けパターン』を教えてください。私はそれを知りたい。それを知れば、致命的な落とし穴を避けることができるでしょう。それこそが成功への近道だと私は思っています。」

※筆者注:相関があるだけであるにも関わらず、そこに因果をこじつけている、という趣旨

ビジネスの最前線で戦い、数々の修羅場をくぐり抜けてきた方だからこそ、共通項括り出し型の安っぽいビジネス理論やリーダーシップ論の危うさを本能的に察知していたのでしょう。改めて「戦略コンサルタントの基本流儀」を再確認させられたこの瞬間は、今でも私の脳裏に焼き付いています。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。東北楽天イーグルスの野村監督(当時)が好んで口にした言葉(※筆者注)です。「負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、その試合中に何か負ける要素がある。また、勝ったときでも、何か負けに繋がる要素があった場合がある」という意味です。だからこそ、試合に勝つためには、負け試合における負ける要素が何にあったのか、どうしたらその要素を消せるかを考える必要がある。勝ち試合であっても、その中には負けに繋がったかもしれないことを犯している可能性があり、たとえ試合に勝ったからといっても、その犯したことを看過してはならない、という教えです。

※筆者注: 原典は、江戸時代中後期の大名で、肥前国平戸藩の第9代藩主であった松浦静山の剣術書『剣談』

リーマンショックに端を発する世界金融危機の後、戦略コンサルティング業界において「コスト削減」が旬なテーマであった当時、戦略コンサルタントの大先輩と議論をしたことがあります。「コスト削減というテーマで経営層と議論する際、戦略コンサルタントして必要な視点は何か?」。