そこで岡山氏は、スチーマーの購買層でもある、部下の女性たちに尋ねた。

「君たちは、なんで美容スチーマーを使わないの? お客様は、どんなモヤモヤがあるから、この商品を使わないのか。そのモヤモヤ感を解消してみようや」

こうして出てきた答えは「忙しくて時間がなく手間もかかるため、スチーマーを使い続ける自信がない」というものだった。スチーマーを使うには、タンクに水を入れ15分座って蒸気を顔に当てるだけ。男性にとっては、美容に強い興味を持つ女性たちなのに、なぜスチーマーを使わないのかがさっぱりわからない。

納得できなくてもある程度任せる

アプライアンス・ウェルネス マーケティング本部 商品グループ ビューティ・ヘルスケア商品チーム/岡山氏の下にビューティ商品とヘルスケア商品、それぞれのリーダーが1人ずつつき、スタッフは1人で2~3の商品を担当する。女性スタッフたちは岡山氏を「話しやすい上司」と話す。

ところが仕事を持つ女性にしてみれば、その15分が惜しい。15分あればお皿も洗えるし洗濯物も干せる。疲れている日はたとえ15分でも余計に眠りたい。だからもしスチーマーを買ったとしても、いずれ使わなくなるのは目に見えている。

「時間がない」「手間がかかる」という理由を払拭するにはどうすればいいのか。そこで出てきた言葉が「ながら」だった。毎日確実にすることと一緒に、スチーマーを使ってもらえばいい。

毎日確実にすることは何か。それは寝ることと働くこと。「寝ながら、働きながら」なら無理せずスチーマーを使い続けることができる。ナノケアシリーズを支える「ながらカルチャー」が誕生した瞬間だった。

「私は空質関係でのキャリアが長かったため、ビューティの家電商品については、恥ずかしながら、いまだによくわからない点も多い。ですから私は女性メンバーにとにかくいろんな提案をしてもらっています。私たちが扱っている需要創造商品の場合、開発者は自分を購買層と想定しながら、たくさんのアイデアを出すことが重要になる。