強い信頼関係の下では、言葉の裏に隠れた意味合い、隠れた問題さえも相手に伝わり、コミュニケーションは瞬時に成り立つ。仮に失敗した場合でも、互いに許し合い、協力してリカバリーできる。信頼は仕事のスピードを速め、同時にコストを下げるのである。

最も信頼できるビジネスリーダーの1人に世界的な投資家であるウォーレン・バフェットがいる。彼はウォルマートの子会社を約230億ドルで買収したことがある。通常これだけの規模の取引を締結するには1年近くかけ、相手企業の調査に数百万ドルものコストを要するものである。ところが、この買収では両者に厚い信頼関係が築かれていたので、わずか2時間の話し合いで握手をし、相手企業の調査は行わなかった。取引はわずか29日間で完了したのである。「我々はウォルマート側の計画がすべて実現するとわかっていたし、実際その通りになった」とバフェットは後に述べている。信頼関係がスピードを生み、コストを最小限にするという同じ原則はどのような組織、どのような人間関係にも適用される。

リーダーの信頼は「人格」と「能力」の2つから成り立つ。両者が高いレベルにあって初めて、そのリーダーは信頼性があるとメンバーから評価される。仮に、人格が並外れてよくても、能力の低さをカバーすることはできない。その反対も同様で、どちらも高いレベルにあることが求められる。

図8はその関係を樹木にたとえた絵である。ここにあげられている各項目について、日頃の自分を省みてほしい。

「第8の習慣リーダーシップ」の研修ではもう1つ、リーダーが自らを振り返るためのツールを取り入れている。これはコヴィー博士の息子、スティーブン・M・R・コヴィーが著書『スピード・オブ・トラスト』であげている「信頼されるリーダーの13の行動」である(図9)。表の項目を日々の行動に照らし合わせてみよう。自分の強みと弱みが明確になるはずだ。