2013年2月15日(金)

ジャガイモを煮崩れさせない3つの策

プレジデントFamily 2012年4月号

大塚常好=文 市来朋久=撮影 塩出尚子=撮影協力
先生:お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授 香西みどり

和食の定番でおふくろの味といえば、肉じゃが。誰にも好まれる総菜だが、作るのは簡単なようで案外難しい。ジャガイモのホクホクした食感は楽しみたいが、あまり長く加熱しても煮崩れてしまう。ちょうどいい具合のやわらかさにする手だてはあるのか。今回は、その策を専門家に聞いた。

――ジャガイモはなぜ煮すぎると溶けてしまうのですか。

 

先生ジャガイモにはペクチンという物質が含まれています。この成分は、細胞壁を構成し、さらに細胞と細胞の接着剤のような役割を果たしています。加熱をして80度以上になると、ペクチンは分解されやすくなり、細胞と細胞をつなぎ止める働きが弱まり、煮崩れてしまうわけです。圧力鍋のように120度くらいで加熱すると、ペクチンの分解が速いため、短時間で煮崩れてしまうのです。

――ペクチンによる細胞間の接着をほどよく緩めることが、ジャガイモらしいおいしさにつながるんですね。でも、緩み過ぎては台無し。煮崩れ防止にはどんな工夫ができますか。

 

「温度調整」「pH値」「油コーティング」どれがいい?

先生まず、比較的簡単に煮崩れ防止ができるのは温度コントロールです。ジャガイモを水から加熱してゆっくり温度を上げれば、外側も中心部分もほぼ均一に温度上昇が起こります。50~80度、特に60度付近を通過するときに、ジャガイモが硬くなる現象が起きるのでその後に80度以上で長く加熱してもペクチンが分解されにくく煮崩れしにくいんです。

――温度の調整に注意しないといけないんですね。

 

先生ただ50~80度の時間があまりに長いと、そのあといくら加熱してもやわらかくなりません。たとえば60度付近を2時間保つと生の状態よりも硬くなることもあります。あとからどんなに長く加熱しても硬い状態なんです。

――肉じゃがに梅干しを入れると煮崩れ防止にいいという話を聞いたことがあります。本当ですか?

 

先生煮汁への影響を考えると有りうるでしょう。ペクチンは、中性、アルカリ性の状態では熱で分解されやすいのですが、酸性になると分解されにくくなります。梅干しにはクエン酸という酸性成分があり、煮汁に梅干しを入れるとより酸性になり、加熱したときジャガイモが崩れにくいのです。ただし、しょうゆを入れた調味液そのものがやや酸性のため、水煮よりは煮崩れしにくいです。酢やレモンなど酸性のものなら梅干しと同じ効果があります。pH(ペーハー)という、酸性とアルカリ性のレベルを表す水素イオン指数があります。pH7が中性で、7超~14がアルカリ性、7未満なら酸性です。ペクチンはpH4が一番分解されにくいんです。pH4未満、例えば2付近のとても酸っぱい状態では、今度はペクチンが分解されやすくなります。

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大塚 常好