商談前に靴を磨いているか

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図1/能動的にアポイントを入れる

商談の第一歩はアポとりから始まる。1500万円社員はアポとりの段階から商談が始まっていることを心得ていて、自分の仕事の効率を考えている。それが顕著に表れたのが「相手先への訪問日時の決め方」(図1)である。1500万円社員の35.6%が、自分のスケジュールに影響を与えないように都合のいい複数の日時を提示して選んでもらう方法を採っている。この時点ですでに心理的に優位に立てる。相手の都合を優先させるにしても、24.5%が「相手に複数の日時を指定してもらう」と答えている。この方法は相手の都合に合わせているように見えるが、最終的に訪問日時を決めているのは自分なのである。

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図2/勝負前に靴を磨く人が過半数

一方、「相手の都合にすべて合わせる」との回答は600万円社員のほうが多い。1500万円社員が4.7%なのに対し11.9%もいる。商談相手のいいなりになり、振り回されている姿が浮かぶ。

取引先に好印象を与えるために、商談やプレゼン前に身だしなみを整えることが大切なことは誰でも知っている。そのため「身だしなみを整えていますか」という質問に対しては大半の人が「はい」と答えている。ところが一歩踏み込んで「商談、社外プレゼン前に靴を磨きますか」と聞くと、1500万円社員の55.3%が「はい」と答えたのに対し、600万円社員は43.5%(図2)。つまり「身だしなみを整える」という漠然とした意識を、「靴を磨く」といった具体的な行動に転換できる人のほうが成功していると考えられる。

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図3/プレゼン前に敵を知る

商談やプレゼンの進め方に関する自由回答を見ると、600万円社員には「明るい印象を保つ」「メリハリをつける」という答えが目立った。確かにその通りだが、この答えからは自分のことで手一杯で、相手のことに意識が及んでいない様子がうかがえる。その点1500万円社員はプレゼン中に「相手の真意を探る」「何を考えているのかを探り出す」ことを考えていて、説明に緩急をつけたり表現を変えるといった知恵を働かせて、相手の心に届くよう努力している。

ビジネスプランの3大要件は、顧客ニーズをつかむ、ニーズに合った商品を提供する、競合他社を想定する、である。前2者はできたとしても、競合を想定することはなかなかむずかしい。この調査でも、1500万円社員では31.2%(「あてはまる」の回答)が競合相手を想定して作戦を立て(図3)、自社の優位性をアピールしている。ところが600万円社員では競合相手を想定しているのは9.3%(同)にすぎず、ここでも自分のことで手一杯な様子がうかがえる。

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図4/すぐに売ろうとしない

商談で挨拶をすぐに切り上げて本題に入ると、売らんかなの姿勢があらわになってしまう。ある紳士服のトップセールスマンは、いかにして商談に入らずに相手とできる限り会話するかが勝負だと言う。話をしているうちに心の窓が開いていく。ところが、売れないセールスマンは、すぐに売ろうとしてしまう(図4)。初回と複数回では異なるので、そのままは比べられないが、事実600万円社員では76.6%が挨拶を早々に切り上げて商談に入っているのに対して、1500万円社員では67.1%。つまりは「場の空気」が読めるかどうかということにつながっていくだろう。商談に入る雰囲気が醸し出されてきたときにすかさず本題を切り出せれば成約率も高まる。