電話帳をめくって耐えた孤独の日々

積水ハウス会長兼CEO 和田 勇氏

ビジネスマンは孤立を恐れず新しいことに積極的に挑戦すべきだ。人がやらないことに挑戦すれば足を引っ張る人が必ず現れる。それを気にしていても仕方がない。出る杭は打たれるが、まずは打たれるくらいに出ないと始まらない。

じつは私も出る杭だった。名古屋で営業所長をしていた1970年代、都市部で地価が上昇してマイホームが入手困難になり、賃貸のニーズが高まった。そこでプレハブの集合住宅をつくることを考え、営業所レベルで勝手に開発した。社内で物議を醸したが、結果的にこのとき開発したものがもとになり、現在のわが社の賃貸住宅ブランドの商品「シャーメゾン」へと発展した。

攻めの姿勢はいまも変わらない。住宅はドメスティックな産業と思われがちだが、いつまでも内向きではいけない。そこで私自身が先頭に立ち海外4カ国で新しい事業をスタートさせた。国内の限られたパイを取り合うだけでは企業は成長しない。リスクを取りパイを広げる勝負をしてこそ成長がある。

これは人の成長も同じだ。孤立を恐れて自主規制してはいけない。まわりの目を気にしていたらスピードは鈍る。タイム・イズ・マネーと考えて前に進むのみだ。

孤立に耐えられるほど精神的に強くないという人もいるだろう。かくいう私も、最初からタフなわけではなかった。65年に入社した私は、同期の中で1人だけ名古屋の営業所に配属された。

ところが本社から連絡が入っていなかったらしく、所長からは「(配属について)何も聞いてない」と突き放された。新人に手も回らないようで、仕方なく電話帳をめくって時間を潰す日々が続いたが、孤立というより孤独。あのときの心細さは、いまでも昨日のことのように覚えている。

心が折れそうになったときに救ってくれたのは実績だった。誰も何も教えてくれないので、見よう見まねで営業を始めたところ5月に1件の契約が取れた。それを心の支えに頑張ったら2年目に販売数は全社一になった。こうした実績は不安や迷いを消してくれる。孤立に苛まれそうになったら、まずは実績づくりに専念すること。それが自信になり、新しい挑戦をする意欲へとつながっていく。