仏の上司と厳格な上司。今、どちらが求められているか?

いまの上司は叱り下手。われわれは今回、大企業のカリスマ経営者3人と幹部教育のエキスパート・染谷和巳氏に連続インタビューをお願いした( http://bit.ly/YdYgzr )が、全員に共通していたのはこの認識だった。部下との葛藤を避け、いま一歩、積極的な指導に踏み出せない。そんな悩みを持つ管理職が増えているのだ。

そもそも「叱る」とはどういうことか。

染谷氏の答えは明快だ。仕事やマナーについて「教える」「注意をする」、それでも身に付かないときに部下を「叱る」という。

「人は褒めて育てるべき」と語る渡邉美樹ワタミ会長も同じ認識だ。部下を育てるには褒めるだけではなく、どこかで叱る場面が必要になるというのである。

では、どう叱るのか。

かつては「同僚の面前ではなく別室に呼んで叱れ」というセオリーがあった。しかしSBIホールディングスの北尾吉孝CEOは「問題が起こったときは、即時、公開の場で叱らなくてはいけません」と指摘する。その場にいる全員に、何がいけないかを周知するためだ。

ただし、大企業のホワイトカラーを念頭に置く北尾氏は「当人(ヒト)ではなく、失策そのもの(コト)を叱れ」と釘を刺す。どんなにきつく叱るときでも、部下のプライドを傷つけてはならないというのが北尾流。たとえば幹部に雷を落とすときは「そんなことでは、いつまで経っても僕を抜けないぞ」と言い添える。やる気を引き出す、みごとな殺し文句だ。

染谷氏も「その場の行為を見て(中略)人前で叱るべき」と断言する。北尾氏と同じく周囲への教育効果を重んじるためだが、それだけではない。

「翌日になれば(中略)必ず言い訳が出てくる」。それでは効果が半減するというのだ。