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サムスン「地域専門家」の派遣者数

白物家電に強いLGでも、「現地化」した社員が各地で活躍する。同社はインドで鍵付きの冷蔵庫をヒットさせた。早大大学院の小林教授はその理由を解説する。

「インドでは冷蔵庫は高級品。冷蔵庫のある家庭のほとんどには、お手伝いさんがいます。彼女たちが冷蔵庫のものをつまみ食いすることも日常茶飯事。家の主人のそうした声を聞いたLG社員から生まれたアイデアです」

08年より中東で発売されている「コーランTV」もユニークな商品だ。テレビに全114章からなるイスラム教の経典「コーラン」の文章を標準装備。あるチャンネルに合わせると、音声とともに画面に表示される。これも徹底した現地化の賜物だ。

人口1億2000万人の日本に対し、5000万人弱の韓国は外需に頼らざるをえない。しかも、韓国企業が改革に乗り出した90年代後半、先進国市場は日本企業がことごとく押さえていたため、やむをえず新興国市場を開拓しなければならなかった。そんな事情はあるにせよ、結果的に各国に溶け込んだ韓国人たちの活躍が今の勢いを支えているといえよう。

韓国企業は新興国市場を制覇した後、欧米市場にもしたたかに食い込んできている。図に示したサムスン電子の「地域専門家」の数を見ても、欧米や日本への派遣者が10年に急増していることがわかる。昨年から今年にかけて、韓国政府とEU、米国とのFTAが発効された。こうした国を挙げてのバックアップ体制も追い風となりそうだ。

世界市場の動きを敏感に察知し、迅速に対応した韓国企業。内需に甘える一方で、みすみす有望市場を逃した日本。現時点での勝敗は、もはやいうまでもないだろう。

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