パナソニックは今期、7650億円の赤字となる見通しだ。前期と合わせて2年で1兆5000億円超が吹き飛んだ計算になる。一方、サムスン電子の前期純利益は約9000億円。今期の最高益更新も堅い。(※雑誌掲載当時)なぜ、この差がついたのか。両国企業の「人材力」を徹底検証する。
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日韓企業「人材力」対決

「私たちは日本メーカーの『チェイサー』です。特にソニーには、まだ10年遅れています」

韓国大統領選を約1カ月後に控えた2012年11月上旬、ソウル市内のレストランで流暢な英語を操るサムスン電子の男性社員は、やや緊張気味にほほ笑んだ。

30代後半だった4年前、韓国の大手通信会社から同社に転職した。今は主力の携帯電話事業のR&D(研究開発)部門の中堅幹部として、多忙な日々を送る。毎朝6時には市内の高級マンションから高級車で出勤。ソウル郊外のR&D拠点で仕事に没頭し、夜遅く帰宅する。休日出勤も厭わない。待遇・給与については詳細を明かそうとしないが、「韓国一。不満はありません」と明快だ。

終始、温和な表情ながら、こちらが業務についての質問を繰り返すと、「企業秘密を扱っているので……」と言葉を濁した。「一番になったとは思っていません。まずクリエーターが足りない。社内では『ファースト・ムーバー(first mover)であれ』と、いつもハッパをかけられています」。

驕りを戒めながらも、底知れぬ自信と強い意志を際立たせるこの「サムスンマン」は、今の韓国を象徴しているようだった。

1997年、韓国経済はアジア通貨危機で破綻寸前まで追い込まれ、国際通貨基金(IMF)に支援を仰いだ。その屈辱をバネに、政府は構造改革を断行し財政を再建。サムスン、現代自動車、LG電子などの財閥は急成長を遂げた。一方の日本。大手メーカーの業況は目を覆わんばかりだ。ソニー、パナソニック、シャープが今年度の連結中間決算で巨額の赤字を計上し、数千から1万人規模のリストラも実施。自動車業界も、尖閣諸島問題の影響で中国向け輸出が激減するなど、苦境が続く。

ところが、日本の企業には驚くほど危機感がない、との声が漏れてくる。韓国企業の現状に詳しい多摩大学の金美徳教授は、「日本の経営者に会うと、『韓国企業は元気だよね』なんて、まだ呑気に“上から目線”です」と首を傾げる。

韓国企業が台頭した理由として、ウォン安、各国とのFTA(自由貿易協定)、日本より低い法人税などがよく挙げられる。だが、はたしてそれだけなのか。先のサムスン社員の発言にも表れているように、1人ひとりの意識の違いがこの差を生んでいるのではないか。

今回の取材では日韓企業の人材に焦点を当てた。5つの項目に分けて比較する。