研究所へは週1回 新商品は必ず試食

冷凍食品は、新商品が業界で年間に100種類も200種類も出る。明治も10種類は出す。量販店での場所とりも激しく、消費者の舌も厳しい。でも、ちょっとした工夫で、大きな差が出る。商品開発では、その「他社より半歩先」くらいの違いを出すことが、大事だ。二歩も三歩も先をいくようなものは、突出しすぎで、市場の多くに受け入れてもらえない。味でも使いやすさでも、他の商品と「ちょっと違う」というのが肝要だ。そのためには、お客の声をきちんとつかむことだ。そう確信した40代。その経験を、明治乳業の社長に就任し、社内報で述べた所信で、冒頭部分に書く。

社内の最先端技術を活用するために、よく、東京・東村山にあった研究所へ通った。月1回だった開発会議を週1回に増やすと、研究所の面々も張り切った。市場や業界の情報を出すと、技術者たちがいろいろな案を出してくれる。離れた本社から研究所にお願いしても、じかにやり合う濃密さには追いつかない。とくに、「味」は実際に口にしてみないと、わからない世界だ。

研究所はその後、神奈川県・小田原へ移った。だが、社長になってからも、研究所の発表会や報告会には欠かさずにいく。メーカーだから、基になる技術をちゃんと知っておかないと、トップとして失格だ。明治製菓と経営統合するまでの8年間、新商品は、すべて試食した。統合後は、埼玉県・坂戸にある明治製菓の研究所にも足を向け、お菓子も試食した。あまり決定的な感想を言ってしまうと、開発陣が萎縮しかねないので、「前の品と比べて、どこがよくなったの?」と言う程度に抑えてはいる。研究所訪問は、持ち株会社の社長になっても続ける。

製菓と乳業の技術を融合すると、面白い商品が次々に生まれる。3月に常温管理のお菓子とアイスの双方で売り出したチョコ風味の「クリスピーズ」は、代表例だ。製菓のチョコレートづくりと乳業のアイスクリームづくりの技術を生かし、5月に稼働した関西アイスクリーム工場で生まれたのが「チョコレートアイスクリームバー」。そんな統合の成果に勢いをつけるため、2つの研究所を管轄する研究本部も合体させた。

デフレの長期化、原材料価格の高騰、少子高齢化に伴う需要減など、「2020年に食品事業の売上高1兆3000億円、営業利益率5%」とした長期経営計画へのハードルは高い。差別化を進める研究開発に、もっと力を入れなければならない。

でも、冷凍食品は添加物も入れてなく、「安心・安全」の信頼度が高いから、いまの時代に需要は拡大するはずだ。スーパーと連携し、高齢者や単身世帯向けに少量の冷凍グラタンを100円で売り出したら、手応えがある。ご飯や麺類も冷凍に適しているから、高齢化社会で、小分け品が喜ばれるだろう。ここでも、時代の変化に応じた戦略と布陣が不可欠だ。「兵形象水」で攻めなければ、勝ち抜くことはできない。