真面目な社員の意欲を削がないために

チームのメンバーがみんなの共通の利益のために働くのを促す環境をつくるには、マネジャーは何をすればよいのだろうか。まずは、仕事が公正に分配されているかどうかという視点から、慣行や方針を見直す必要がある。

家電量販店、ベストバイのマンチェスター店のゼネラル・マネジャー、エリック・タバーナの経験を例に挙げてみよう。2003年7月の従業員意識調査で、タバーナの店はエンゲージメントの点数が「良好」ではあったが、「優秀」ではなかった。従業員たちは、質の高い仕事をすることに同僚が真剣に取り組んでいるか否かという項目に、とくに低い点数をつけていた。

タバーナと5人のアシスタント・マネジャーは次の四半期、全店ミーティングでこの問題を持ち出した。すると数人の従業員が解決策を提案した。閉店時に勤務しているすべての従業員が部署の垣根を越えて同僚を助けるために協力する「チーム閉店」を実施する、という案だった。マンチェスター店の状況は、どのアシスタント・マネジャーが閉店を監督するかで違いがあり、複雑になっていた。比較的小さな部署の従業員は、仕事を終えたら他の部署の同僚より早く帰宅できることもあれば、そうでないこともあった。マンチェスター店は午後9時半に閉店していたが、一部の従業員は、同僚はずっと前に帰宅したというのに、12時近くまで店に残っていることも珍しくなかった。意図的にではないにしても、これが社員の意欲を削ぐような結果をもたらしていた。

従業員の提案を受けて、タバーナと5人のアシスタント・マネジャーはチーム閉店の手順をつくり、それに従うことで合意し、03年のホリデー・シーズンが近づくなかでそれを実行に移した。翌04年1月に行われた次回調査では、この店のエンゲージメントの点数は「良好」から「優秀」にはね上がり、ギャラップ社の作業グループ・スコア・データベースの上位10%に入った。同時に、予算達成率も向上し、離職率も大幅に低下した。社員に率直なフィードバックを求めることもただ乗りを防ぐ効果がある。

仕事に取り組む姿勢の下降スパイラルの出発点を特定するためには、ナンシー・ソレルスが業績不振にあえぐダラス近郊のマリオット・ホテルのマネジャーに任命された際に行ったことが、参考になる。彼女は社員たちに「このホテルで最もひどい社員は誰で、その人物はここに何年勤めているか」と尋ねた。なぜそんなことを聞くのかと質問されると、彼女はこう答えた。「最もひどい社員があなた方の基準をつくっていることは疑いの余地がない」。

少数の同じ名前が何度も出てくる場合には、彼らの仕事ぶりとそれが同僚に及ぼしている影響をじっくり観察せよというシグナルだ。

マネジャーはまた、新入社員の行動をよく観察しなくてはならない。意欲に満ちた新規採用者が特定の先輩社員にアドバイスや交友を求める傾向がある場合には、その社員をうまく活用しよう。彼により大きな責任を持たせ、また、彼から組織についての見解を聞き出そう。彼はあなたが気づいていないことを知っているかもしれない。

社員のエンゲージメントはけっして企業やチームの成功の唯一の要因ではないが、社員のエンゲージメントを向上させ、維持することが利益にプラスの影響を及ぼすことは明白だ。チームのエンゲージメントの向上を重点課題としないかぎり、どんなマネジャーも同僚への責任、会社への責任、株主への責任を完全に果たしたことにはならない。

(文=ロッド・ワグナー&ジェームズ・K・ハーター 翻訳=ディプロマット)