効率アップのコツ1
短い英文を徹底的にものにする

異なる英文をたくさん読んだり聞いたりしただけで、覚えもせずに終わらせるよりも、短い英文を徹底的にものにする方が英語の「運用力」を伸ばすには最終的には効率がいい。徹底して身につけた英語表現は自分の血肉となり、あらゆる場面で応用しやすいからだ。

また、短い英文なら仕事の合間を縫って学習できる。私が提唱している英語学習教材は、約100語(口に出して1分間程度)の単位に区切られていて、音声付きのもの。口に出して1分間という長さの英語は、音声をスマホなどに入れておけば、通勤電車の中、車の運転中、アポイントメントに早く着いてしまったときなど、ちょっとした時間に全部聞けるし、心理的負担が少ない。

効率アップのコツ2
共感・尊敬できる人物の英語を教材に

効率アップにはテキストを入念に選ぶことも大切だ。まずは、自分とジェンダー、職業、年齢、趣味などできるだけ共通している英語人が話す言葉を意識的に選ぶこと。あなたが英語で話すことになるだろう内容とかぶる可能性が高いからだ(ちなみに私は『セックス・アンド・ザ・シティ』の女性たちからたくさんの英語表現を吸収した)。

さらに、「その英語はいずれ自分自身の言葉になり、言葉とは使う人の人格を反映するのだ」ということを肝に命じて、共感し、尊敬するビジネスパーソンや著名人のスピーチを選ぶことも考えてほしい。語学は「続けてなんぼ」のもの。教材の内容に共感し、感動することは、継続するモチベーションを維持するのにも役立つのだ。

効率アップのコツ3
リスニングを強化する

リスニングが苦手であることは、英語学習の楽しみを大きく奪う。しかし、昭和の英語教育を受けた人には、読む、書く、話す、聞くのなかでも特にリスニングが苦手で、簡単に読めることが聞き取れない人が多い

もちろん、私たちが現場で英語人の話を聞くときにテキストがあるわけではない。いきなり音声だけから意味を取ることが必要だ。しかし、私たちの多くは音声から意味を取る力が弱い。『クラウン』など、英語の教科書はいい英文を掲載していたが、授業の仕方が、リスニング能力の伸びをほとんど無視していた。教科書には、新出単語のリストがあってそれぞれの発音記号が書いてあった。しかし、Won't you help me? は、「ウォウンチューヘルッミー」みたいな発音であるように、英語の口語文には連結して変わったり、無声になる発音要素も多いので、単語ひとつひとつの発音記号を覚えても、英文を聞き取るのに十分ではない。

そこで、昭和の英語教育を受けたビジネスパーソンに、「栗とあんこの羊かん」プロセスにもうひとつ付け加えてほしいのが、音声だけから意味を汲み取る練習だ。

音声付きの英語教材を購入したなら、テキストを見ないでまずは音声だけを聞いてみてほしい。よくわからないと、テキストを見たい症状が絶対に出てくるがここでがまんして、少なくとも3回は繰り返して聞くこと。

そして飽きるほど聞いたあとでテキストを見たときに「え!“イナネックライ”と聞こえていたものが、Internet crimeだったなんて!」という驚きが、リスニング強化につながる。そして次にInternet crimeという単語を聞いたときには、前回自分の頭の中でカタカナに置き換えた「イナネックライ」ではなく、ちゃんとInternet crimeと聞こえる可能性が高まる。

そしてここでせっかく聞けるようになった英語は、もちろんちゃんと理解し、「栗とあんこの羊かん」プロセスを経て、自分の言葉にする。音声とテキストをセットで覚えているので、きっとその言葉は聞けて、話せて、読めて、書けるようになるはずだ。


ビジネスパーソンに
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もっと流暢に話したい

英語圏の大学のクラスで関連学部のレクチャーをiTunes U視聴。大学レベルの英語でも自分の専門分野であればわかることが多い。

国際的なイベントで世界各国の人々に聞かれることを前提とした同業種の多国籍企業ビジネスパーソンのスピーチ。例えばITならビル・ゲイツ氏や故スティーブ・ジョブズ氏など。有名なスピーチはYouTubeなどの動画サイトにアップされている。

TEDでは、テクノロジー(T)、エンターテインメント(E)、デザイン(D)を中心に、幅広く世界に広めるべきと思われるアイデアのプレゼンを提供。インターネットを通じてビデオ映像をアップしている。

説得力を高めたい

オバマ大統領の就任演説など、英語圏の政治家などの主要演説。

*トランスクリプション(書き起こししたもの)がない場合、知り合いのネイティブスピーカーか英語の達人に依頼。語学学校や翻訳会社で、有料でやってくれるところがある。
*『35歳からの「やり直し」勉強法』(日本実業出版社)より。