ホスピタリティが倒産の危機を救うストーリーに感動

TOTO 木瀬照雄 会長 
1947年生まれ。70年京都大学卒業後、東陶機器(現TOTO)入社。96年に取締役就任、2003年社長。09年より現職。

お客様の心をいかに捉え、感動のサービスを提供できるか。我々が常に追い求めているテーマである。ゆえに、心の持ち方ひとつで素晴らしい人間関係を持ちえたという話に、強く惹きつけられる。

銀座で一番人気のバーといわれるMORI BARのオーナー毛利隆雄氏が書き下ろした『マティーニ・イズム』。「感謝があれば何とかなる」を座右の銘とする店だが、お客様に褒められて育つという考えは、ビジネスでも大いに参考になる。会社帰りに部下を飲みに誘うとき、こんな本を読んでおけばよりよい時間が過ごせるのではないだろうか。

北九州で展開している美容室バグジーの実話を漫画形式で紹介している『愛と感謝の美容室 バグジーI』も、コミュニケーションの大切さを説いた1冊だ。開店当初は、カリスマ美容師社長の傲慢な顧客対応、売り上げ至上主義の従業員指導で、店は倒産の危機に直面した。しかし徹底したホスピタリティに目覚め、それを実践していく1話1話が、人間力とは何かを考えさせてくれるストーリーになっている。実はあまりに感動して、著者にわが社で講演していただいた。『人生はいつも「今から」』という、冒険家・三浦雄一郎氏の著書もお勧めだ。エベレスト登山、世界最高年齢登頂など、数々の栄光を手にしてきた三浦氏は、いつも「今から」という心を大切にしているという。気持ちの持ち方ひとつで人は偉業を成し遂げられるし、人生でさえ変えられるのだと感動した。

宮本輝の『流転の海』の主人公のモデルは宮本輝本人と、その父だ。大阪の凄腕実業家の父・熊吾と、その息子・伸二の父子関係を軸に描かれた20年以上続く人気のシリーズ小説である。終戦後の混沌かつエネルギッシュな時代を舞台に、事業に失敗しながらも闇雲に突き進む熊吾だが、物語は熊吾が50にして初めて子どもを授かったところから始まる。豪放磊落で理不尽でありつつ、どこか優しさも併せ持つ熊吾の魅力やパワーに強く惹きつけられる。人生の意味、生きる目的、家族とは何なのかについて思いをめぐらすことができた。仕事や自分自身のことだけではなく、幸せの基本は家族からなのだと思い出させてもらえる。

木瀬照雄会長が選んだ4冊

■マティーニ・イズム [著]毛利隆雄/たる出版
■愛と感謝の美容室 バグジーI [著]田原 実/インフィニティ
■人生はいつも「今から」 [著]三浦雄一郎/ロングセラーズ
■流転の海 [著]宮本 輝/新潮社