2013年1月25日(金)

ホウレンソウは蒸し料理には向きません

プレジデントFamily 2011年2月号

長山清子=構成、撮影協力 市来朋久=撮影
先生:女子栄養大学助教 日笠志津

 

栄養を逃がさず、手軽に野菜をとれる「蒸し野菜」が人気を集めている。しかし野菜のなかでも、ホウレンソウだけは蒸さないほうがいいのだとか……?

 

――タジン鍋やシリコンスチーマーなど、蒸し料理のための器具がよく売れているようです。野菜を蒸すとかさが減ってたくさん食べられるし、栄養の流出も少ない。油も使わないからヘルシーですよね。でもホウレンソウだけは、蒸すのではなくゆでたほうがいいと聞きました。なぜですか?

 

先生ホウレンソウにはアクの成分となるシュウ酸が含まれています。歯がきしきしするような感じがする“えぐみ”の成分です。これはおいしさを損なうばかりか、結石の原因になる人もいるといわれています。
 でもシュウ酸はゆでることで取り除けるんです。ゆでるとホウレンソウの葉の組織がやわらかくなり、シュウ酸は水溶性ですのでゆで汁の中に出ていきます。実験では2~6割ほど減少するという結果もあります。ところが蒸したり、電子レンジで加熱したりすると、閉じこめられてしまいます。

――蒸し料理にしたら栄養は減らないけれど、好ましくないものも減らないということなんですね。

 

先生そうなんです。冬はホウレンソウの旬の時期です。ホウレンソウは夏と冬では栄養値がまったく違うのは有名ですよね。ビタミンCでいえば、冬のほうがおよそ3倍以上です。栄養素が充実していると、当然ほかの成分も多くなるのでえぐみの成分の1つであるシュウ酸も多くなるのです。

――ということは、おいしく食べるためにも、ゆでたほうがいいんですね。

 

先生そうです。それからホウレンソウには硝酸も含まれています。これは体に悪い作用をもたらす心配があり、WHO(世界保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)が主催する専門家会議では1日の許容摂取量を出しています。

図を拡大
「ゆでる」か加熱後「水さらし」をすること
――シュウ酸だけでなく、硝酸というものもあるんですか。ややこしいですね。

 

先生硝酸は窒素から成り立っていますが、植物にとって窒素は私たち人間が栄養素としているタンパク質や糖質や脂質などにあたるもの。つまりそれがないと生きていけない、植物にとって不可欠なものなので、肥料には必ず含まれています。野菜の種類によって硝酸を蓄積しやすい植物と、そうでもないものがあって、コマツナやホウレンソウなど葉物の野菜に多く含まれることがわかっています。でも、硝酸も水溶性なので水を介せば抜けていきます。
 硝酸は人の体内で発がん性の強い物質を生成する可能性があるといわれているんです。ですからある程度食べる量を制限したほうがいいといわれています。

――じゃあますます、ホウレンソウはゆでて体内に入ってくる硝酸の量を減らしたほうがいいですね。

 

先生そうですね。でも、私は忙しいときは電子レンジでホウレンソウを加熱していますよ。よく水洗いしてラップで包んで、30~60秒くらい加熱したあと、ザーッと水にさらして食べています。

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