東京急行電鉄株式会社社長室広報部広報課課長補佐の矢澤史郎氏は、「まずわれわれのコンセプトとしては、渋谷を“大人の街にする”という文脈でPRしてきました」という。渋谷は109を中心とした若者、ギャルの街というイメージが強い。また対照的に50代、60代以降の高齢者層は、東急百貨店本店や東横店に足を運ぶ。ところが、20代後半から40代くらいのとりわけ高感度な働く女性のマーケットがぽっかり抜け落ちていたのだ。そこでそれらの世代をターゲットにすえた「大人の街」というコンセプトを打ち立てたのである。

渋谷ヒカリエの商業施設であるShinQsでは、「スパークメント・ストア」というコンセプトを創造している。

「スパーク」には、「火花が散る」という意味があり、モノとコトとを1つに融合した多様な仕掛けを提案することで、「ときめいて」もらいたいという願いがこの言葉に込められている。ShinQs営業推進統括マネジャーの宮本拓郎氏は、このコンセプトについてこう語る。「売り場を歩いていただく中、思いがけない発見とか、出会いとかを創出しようというのが、おおもとの考えとしてありました」。

消費者の「新しい発見」実現のために、同社がテナント誘致に際して心がけたことは、「ShinQs初」という点だった。商業集積を新設する場合、成功の定石として「初はつ物もの」の提案がある。「日本初」「当地初」といった「初物」はそこでしか買えない希少性を生み出し、消費者の購買心を強くくすぐる。ShinQsもここに強いこだわりを持ち、「渋谷初」というテナントを全体の7割もそろえた。また、他の地域に出店しているテナントであっても、ShinQsでしか出さない商品を品ぞろえするように求めたという。実際、地下2階の「ShinQsスイーツラボ」では、ここでしか手に入らない女性の感性にマッチしたスイーツを提供している。

また、ShinQsでは、“Zakka視点”へのこだわりが強く、それが1つの「個性」となっている。この施設の立地は、渋谷の一等地ということもあって、面的には十分なスペースが取れず、アパレルのように多様な品ぞろえを要するテナントは、絞り込まざるをえない。しかしこれが、ファッション雑貨になると、素材提案ですんでしまう。