総選挙後、橋下氏は「維新」を離れる?

合併後の維新は、石原氏の発言力が日増しに強まっている。既成政党批判の橋下氏に対し、石原氏は、総選挙で単独過半数に届く政党がない場合、「肝心なことを決めるのに過半数がいるんだったら協力する」と、政策ごとに自公政権と部分連合を探る考えを明らかにしている。

また橋下氏がこだわる「(原発を)30年代までにフェードアウト(消えていく)」させる政策も、石原氏が強く反対。憲法についても橋下氏が「憲法は権力者を縛る最後の砦」との立場なのに対し、石原氏は「それは間違っている」と憲法破棄を主張。TPPでも正反対の考えだ。

「石原氏を加えたことで維新は箱根の山を越えて全国区の政党になった」と維新幹部は胸を張るが、所詮は“選挙互助会”。水と油が混じるはずもない。「石原氏らを丸のみしたことで、維新は安倍自民党よりもさらに右翼的な政党に変質した」と言う鈴木氏は、総選挙後の松井一郎幹事長(大阪府知事)の動きに注目する。橋下氏とともに維新をつくった実力者だ。

「松井氏は安倍氏を維新の党首に据えようとしていたほどで、自民党と連立を組んで憲法を改正したがっていると言われています。維新の衆院選の候補者選びは松井氏が中心になって行われ、候補者の大半は松井系。一方の橋下チルドレンは全体の3分の1程度とされます」(鈴木氏)

総選挙後に松井氏らが石原氏らと組んで橋下氏を追い出し、自民党と連立を組む可能性は十分ありそうなのだ。維新が“自民党の補完勢力”になったとき、橋下氏はどうするか。

「みんなの党の渡辺喜美代表は一貫して“戦う改革勢力としての原点に立ち戻ってほしい”と橋下氏に呼びかけ続けています。総選挙後、橋下氏が維新から離れ、みんなの党や日本未来の党など脱原発を掲げる政党と手を組んで、第三極を形成することは十分ありうるでしょう。その場合、来年夏の参院選に橋下氏自身も出馬して勝負をかけるのでは」(鈴木氏)

もし来夏の参院選で第三極が多数を占めれば、法案を通すことはさらに困難になる。安倍氏は綱渡りの政権運営を余儀なくされ、場合によっては安倍氏が再び政権を投げ出す可能性もある。

いずれにせよ、日本の国政が安定するのは、まだまだ先になりそうだ。

(PANA=写真)
【関連記事】
12.16総選挙「自民VS第三極」が焦点か
自民優勢、維新の会と石原新党のベストシナリオとは
野田首相の孤独を癒やす「維新の会」メンバー
小沢氏の政権奪取構想、焦点は「橋下抜き」
「橋下市長の分身」大阪市公募区長24人の顔