次に年収別に見たこのグラフについて、商業施設と消費の動向を読んでもらった。

「500~1000万円の所得層というのは、中堅エリートですよね。しかし、今や大手企業といえども順風満帆ではなく、家電、自動車、旅行業なども厳しい時代です。突然ボーナスが出なくなったり減給も起こり得るし、震災で自宅の不動産価値が下落した人などは、先々の不安感から、高額の消費をする気持ちが起こらなくなっています。500万円以下の層の人たちはさらに戦々恐々としているわけですが、中堅エリート層もメンタリティはあまり変わらない状態にあると考えられます」

ただそこで1000万円以上の所得層の都心集中消費はやや堅調と見る。

「バブル後の都心の地価下落で、この20年間、富裕層の都心回帰現象が続きました。また都心部に数多くのブランドの旗艦店やセレクトショップや和洋中のミシュランの星付きレストランがありますから、わざわざクルマで郊外の商業施設に行く意味はありません。もし今後、富裕層が複合商業施設に戻って来るとすれば、日本以上の格差社会である欧米やBRICsにあるラグジュアリー層限定の会員制ショッピングモールでしょう」

クラス意識が強い欧米など海外では伝統的に富裕層が多く住むエリアに富裕層限定の店舗内の部屋や高級店だけのモールが存在する。服や靴、バックなど会員限定の商品を特別価格で提供したり、オーガニックで安全性の高い食品が入手できる商業施設が各国にある。日本にも百貨店の富裕層向けの外商があるが、言わば、外商だけを切り離して形にしたモールだ。平準社会だった日本の消費も欧米型に近づきつつあるのだと言える。

次回は表の外で大きな数字を出した、2つの大型商業施設にもふれてみよう。

※ビデオリサーチ社が約30年に渡って実施している、生活者の媒体接触状況や消費購買状況に関する調査「ACR」(http://www.videor.co.jp/service/media/acr/)や「MCR」の調査結果を元に同社と編集部が共同で分析。同調査は一般人の生活全般に関する様々な意識調査であり、調査対象者は約8700人、調査項目数は20000以上にも及ぶ。

マーケティングコンサルタント 西川りゅうじん
「愛・地球博」の“モリゾーとキッコロ”や「平城遷都祭」の“せんとくん”の選定・広報、「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」「三井本館」「コレド日本橋」「上海環球金融中心」のコンセプト立案や商業開発、「つくばエクスプレス」沿線PRに携わるなど産業と地域の元気化に努めて来た。厚生労働省「健康寿命をのばそう!」運動スーパーバイザー。瀬戸内海沿岸の7県による「瀬戸内ブランド推進協議会」プロデューサーを務める。
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