2012年12月21日(金)

ホイップクリームの泡立ては電動に頼ると難しい

プレジデントFamily 2011年7月号

大塚常好=文 市来朋久=撮影 塩出尚子=撮影協力
先生:野田正幸

おいしいケーキ作りの決め手――。それは「スポンジ」だけでなく、「クリームの泡立て方」にもあるのではないか。
 聞けば、メーカーのカスタマーセンターにはケーキを作る人が多いクリスマスを中心に、クリームの泡立てに関して相談が多く寄せられるという。どうやら皆さん、苦戦しているご様子。ならば「基本のき」から教わりましょう。

――液体のクリームはなぜ、混ぜると固まるのですか?

 

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※遊離脂肪は脂肪球と脂肪球をつなぐ白い部分。 写真提供:雪印メグミルク株式会社

先生そのメカニズムの解説の前に、クリームの成分について基礎知識を。スーパーなどで売られているホイップ用クリームに含まれる脂肪分はおよそ30~45%です。牛乳を濃縮した、脂肪分が多いものだと思ってください。泡立てる前の液状のクリームでは、脂肪は小さな球状で液体の中に存在しています(写真上参照)。通常、水に脂肪を入れると、水と脂肪は分離しますが、クリームの中では脂肪球の表面が乳化作用のある物質で覆われているため、脂肪球は互いに集まることなく液体の中に分散しています。

――その脂肪球と、クリームが固まることとの関係は?

 

先生はい、順番にご説明しましょう。液状のクリームをホイッパーで泡立てると少しずつ粘度が高くなり、最後はホイッパーを持ち上げると角(つの)が立つくらいに固くなります。泡立ての工程では、クリームに空気を入れているのです。初めにクリームに大きな気泡が入り、さらにかき混ぜていくと気泡は小さくなって、無数の細かい気泡になります。

――もしや「泡立て」が脂肪球に何か影響を与える?

 

先生その通り。クリーム中に気泡が含まれると同時に先ほどの脂肪球の一部が破壊されて、脂肪球から脂肪が出てきます。それを遊離脂肪といいます。この遊離脂肪が脂肪球や気泡をつなぐのりのような役割をするのです。

――接着剤のような働きですね。

 

先生大きな気泡や小さな脂肪球、遊離脂肪などが混在したものが、大小の石を固めた城の石垣のように、立体的な3次元構造(写真下参照)となるのです。脂肪は、この構造変化のために極めて重要な働きをするのです。そのために、ホイップ用のクリームにはある程度の脂肪含量が必要で、それが30~45%なのです。

――よくかき混ぜるのが大事な半面、失敗しがちなのは「泡立てすぎ」。ここでつまずく人が多いです。

 

先生泡立てすぎると、脂肪球から脂肪が大量に外へ出て、せっかくのクリームが固くなってしまいます(攪拌(かくはん)し続けると、水分や気泡が出ていってしまい脂肪が固まり、バターになる)。クリームが固い状態では、ケーキのスポンジの周囲にも塗りづらいですし、コクや風味も一部損なわれます。
 そんなとき、慌ててかき混ぜる前の液体のクリームを加えて固さを調整しようとする人がいますが、おすすめできません。脂肪球の状態が変わってしまっているので、ちょうどいい状態には戻りにくいからです。

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大塚 常好