戦略ファームで得られる能力は経営者に必要な能力の「一部」

Q.戦略立案と経営、何が共通で、何が異なるのか

大学生やビジネススクールの学生たちから頻繁に問われます。北米では、マッキンゼー出身の経営者が次々と有名企業の社長や幹部に就任するさまを「マッキンゼー・マフィア」と評すると言いますから、戦略コンサルタントこそ経営者の登竜門であるに違いない、と考えるのもうなずけます。事実、瀕死のIBMを数年で蘇らせたルイス・ガースナーをはじめ、ボーイング、DHL、モルガンス・スタンレー、ペプシコ、サン・マイクロシステムズなど、戦略コンサルタント出身者がCEOとなった例は枚挙に暇がありません。フォーチュン500に名を連ねる企業に限っても、これまでに70人以上のCEOを輩出しているそうです。

日本においても、戦略コンサルティングファーム出身の経営者は着実に増えています。起業家も多く、上場を果たした例も少なくありません。戦略コンサルティングファームで身につけた論理的思考力やプレゼンテーション能力が普遍的スキルとして役立っていることは確かなようです。

しかしながら、北米であれ、日本であれ、戦略コンサルティングファーム出身の経営者や起業家の多くは、戦略コンサルティングファームの在籍期間が数年程度であることが殆どです。多くは、若くして事業会社に転身してマネージャー職としての実績を地道に積み上げたり、リスクをとって起業した方々であり、ファームに長期間在籍しパートナー(共同経営者)となった後、落下傘型で経営者に抜擢されたり、起業したり、という例は極めて少ないのが実態です。

何故でしょうか? 確かに、戦略コンサルティングファームは、経営者に求められる能力の一部を急速に身に付けるための圧力釜であることは事実です。若くして、業界を俯瞰してモノゴトを眺め、全体最適の観点からデータとロジックに基づく意思決定を繰り返す経験を積める稀有な場です。しかし、それは経営者に求められる能力の一部でしかないこともまた事実だからです。