高齢労働者のやる気を生かす

nジェネラの調査によれば、55歳以上の社員は、職務満足度や仕事に対する誇り、参加意識が高く、65歳以上の社員層ではさらに高くなる。「彼らは自発的に参加しているのであり、自分がやりたいからやっているのだ」と、モリソンは言う。

だが、定年後も働く人たちは、仕事を通じての刺激と職場の仲間意識を求めている。「一番やってはいけないのは、隅に追いやってそれまでずっとやってきたことと同じことをやらせることだ」

モリソンは、人材部門担当副社長として定年を迎え、入社時に就いていた電気エンジニアとして会社に戻った人物の言葉を紹介する。技術畑を離れてからもその分野の新情報を学び続けていた彼は、「これほどの楽しさは何年も味わっていなかったよ」と言ったという。

デロイト・コンサルティングは、あらゆる年齢の労働者に、退職後、会社に残るために必要な計画変更なり職務変更なりを行うよう奨励している。同社は02年、社員に自己評価の方法や社内採用情報、履歴書作成のコツなどを教えるウェブ上のプログラム「デロイト・キャリア・コネクション」を開始した。

同社における組織は梯子ではなく格子であり、人生の段階によって変わる優先事項に対応しやすくなっている。定年に近づいている社員にとって、横や下に移動するという選択肢は魅力的だ。複数の選択肢が用意されていることが大切なのだ。

社会に恩返しする機会を与える

定年退職に関連する問題解決に力を入れる、マサチューセッツ州のコンサルティング会社、ワーキング・ディファレントリーの創業者、アン・ハートマンは、定年世代は他人のためになることをしたいとか、社会に恩返ししたいと感じていることが多いと語る。

高齢労働者がこの欲求を満たす一助となるよう、職場を通じてボランティア活動をする機会を与えよう。もしくはこの信義に厚い人々が社会に恩返しする手助けをするために、メンタリングの機会を与えてもよいだろう。メンタリングは高齢労働者にとって楽しい活動であるだけでなく、技能を伝承する重要な方法でもある。ピットニー・バウズはこのことを認識して、メンタリングの要素を多分に含む同社の段階的退職プログラムを充実させている。ベビーブーム世代が定年を迎えたときの頭脳流出を最小限に抑えるために、同社は「ベテラン労働者から経験不足の若手労働者への知識の伝承」を促進するため努力しているとハフトンは語る。

退職者と連絡を取り続けよう

退職者が会社を去ることを選んだ場合でも、見限ってはならない。「たいてい、6カ月もすれば働きたくてうずうずするようになる」とモリソンは言い、連絡を取り続けることが大切だと語る。人材不足のとき、パートタイムで戻るように声がけすれば、退職者にとって願ってもない話であることも多い。

多くの組織に退職者団体があり、退職者はそうした団体を通じて情報を伝え合ったり、懇親会を開いたりしている。それらの退職者は、たとえ会社に戻ってこなくても、会社のすばらしい「広報官」になるはずなのだ。

※すべて雑誌掲載当時

(翻訳=ディプロマット)