橘・フクシマ・咲江さんのアドバイス

今の40代は1961年から71年生まれの人たちで(※雑誌掲載当時)、「新人類」と騒がれたものでした。その少し上が団塊の世代で、夜を徹して働く「企業戦士」でした。一方、すぐ下には、バブルの恩恵を受けておらず「大学は出たけれど」の「貧乏クジ」世代がいます。40代は対極の価値観を持つ世代に挟まれ、人生で最も多忙といわれる年代を生き抜いている人たちなのです。

G&Sグローバルアドバイザーズ社長 橘・フクシマ・咲江氏

この10年を振り返ると、グローバルの人材市場には2つの大きな波がありました。1つは2000年のITバブル、もう1つは04年からリーマン・ショックが起きた08年夏までの時期です。前者の景気を牽引したのは欧米諸国でしたが、後者は新興国、特に中国とインドの成長が背景にありました。最近は世界的に景気がようやく回復基調となり、あらためてグローバル人財(資産価値のある人材)へのニーズが高まりつつあります。

どんな企業がいつ潰れてもおかしくないこの時代、汎用性のあるスキルを磨いておく必要があります。50代になると、それまでの経験が邪魔をして難しいかもしれませんが、40代前半ならまだ大丈夫です。

たとえば語学です。まず、世界共通言語の英語がいいでしょう。ネイティブ並みに流暢になる必要はありません。なまりのある英語でも、自分の意思を伝えられるレベルを目指しましょう。加えて、中国語などアジアの言語を1つ、聞いてわかるレベルにしておくといいでしょう。語学は、毎日コツコツやると3カ月でも驚くほど上達します。

とはいえ、外国語ができるからグローバル人財になれるわけではありません。大切なのは「心の国境」を取り払うことです。

たとえば、「Aさんはアメリカ人だからこうだよね」という色眼鏡で人を見ない。個人のAさんという目で見てつき合うこと。「アメリカ人であること」はAさんの数ある個性の1つとして捉え、違いは尊重しますが、決めつけないことです。

以前、外資系企業で取締役をしていたのですが、そのときは唯一の社内取締役として、社外取締役の方々に、自社や業界の事情を縷々説明する役割を担っていました。彼らは経歴も国籍もばらばらだったので、理解いただくのに苦労しました。

最初のうちは「Bさんはドイツ人だから、ドイツ人にわかってもらうにはどう説明したらよいか」という考えが頭を離れなかったのですが、しばらくすると「BさんはBさん。たまたまドイツ人で、50代で、男性で、こういう職業経験がある人だ」と考えられるようになって、それから楽になりました。不思議なもので、そうやって接していると、日本が話題になる特別な場合を除き、先方も橘・フクシマ・咲江という個人と話をしてくださるようになったのです。

人を見るとき、国籍等からくる違いは尊重しますが、価値判断を挟まない。これがグローバルで活躍するための重要なポイントだと思います。