物件があれば安泰、ではない。むしろ、取得してからの努力が肝心ということだ。

10棟・400戸以上を所有する風見さんの手許には、空室が目立つマンションの賃料表が。近隣にある自動車メーカーの工場が派遣切りを行った煽りを食った。
10棟・400戸以上を所有する風見さんの手許には、空室が目立つマンションの賃料表が。近隣にある自動車メーカーの工場が派遣切りを行った煽りを食った。

前出の2人の相談に乗ったのが、株式会社コンサルティング・プラスの大澤明仁さん。空室対策のスペシャリストだ。

「池田さんの場合、個人間で契約を結ぶのではなく、不動産業者を仲介にいれるべきでした。滞納保証会社や連帯保証人を立てるなど、契約にまつわる“マニュアル”も遵守すべき。風見さんのケースは、相続前から物件管理に積極的に参加していれば、これほどの空室に悩まなかったかもしれません。不動産管理は他人任せではなく、家族全員のテーマです」

冒頭で述べたとおり、近年は収入安定を目的に不動産を買う個人が増えている。

「定年退職を間近に控えた都内在住のサラリーマンが、見かけ上の利回りがいい札幌の物件を買ったものの空室を埋められず、本末転倒になってしまったケースもあります。この場合、入居者探しを1社に委ねる『専任媒介契約』ではなく、複数で探してもらう『一般媒介契約』にすべきでした。居住地から遠いなど、大家さんが営業できない環境なら、借り主を探す窓口を広げる工夫が必要です」

また、「サブリース(空室保証)」をアテにして物件を購入するのは危険、とも。

「景気の変動で、保証家賃の引き下げが横行しています。必然的に利回りは下がり、クビが回らなくなる大家さんも増えました。誘いにはうかつに乗らないこと。

また、大家業はサービス業です。関係者とうまくコミュニケーションを取る人間力が求められることを忘れてはなりません。個人向けの不動産投資セミナーなどで知識を得るのも有効です」

「負けない大家」になるためにも、彼らの教訓を活かしたい。

(梅原ひでひこ=撮影)