人間の好き嫌いがハッキリしていた談志師匠

【山本】さっき談志師匠の話で、僕が最後に会ったのはいつかなっていろいろ考えたら、志らくさんの会のときに紀伊国屋でやった打ち上げのときが最後ですね。あのとき打ち上げの会場に行く道すがら、おしゃべりしたのが最後かもわからない。

【元木】新宿の末広亭近くの中華屋でしたね。

【山本】話の泉というNHKでやっていた談志師匠の番組に、それにも談志師匠が声をかけてくれてゲストで出させてもらったんですよ。自分の気に入った人しか出さなかったらしい。

【元木】作家の嵐山光三郎さんと版画家の山本容子さんは私が紹介したんです。師匠と合うかなってまわりが心配したらしいけど、師匠は喜んでくれて親しく付き合っていました。

【山本】談志師匠は落語を愛しているかどうかを嗅ぎ分ける力がすごく鋭いから。あと人間に興味があるかっていうのもあったかな。

【元木】好き嫌いは本当にはっきりしてた。

【山本】中間がないの。だめなら徹底的にだめだから。みんな偽物になっちゃう。

【元木】まわりにいるとみんなピリピリしてたよ。弟子だけじゃなくて、みんなまわりの人は大変だよね。私なんかこっち側にひいているから別にいいんだけど。みんな、挨拶からして「どうしたらいいでしょうか」と。いけばいいじゃないですか。だって、そこにいるんだから。

【山本】やっぱり気持の中じゃ復活をと。お弟子さんは、みんなそう思っていたでしょう。

【元木】志ん生のように生きてて高座で寝ててくれてもいい。立川談志はそういうことを潔しとしないでしょうが、車いすだってなんだっていいから生きていてくれればと思います。

【山本】だんだん老いていき歳をとっていき、この過程を見ていると、いてくれてもいいけれど、やはり病気されて久しぶりに出てきたら、いやぁちょっと談志は違うよと思われてしまったと思うんですね。

【元木】入院中はほとんど人に会わなかったし、亡くなってから2日間は弟子にも知らされなかった。私が知ったのは次の日でした。

【山本】じゃ、お葬式はしちゃってからということですか。

【元木】密葬がすんでから娘さんと息子さんが記者会見しました。談志師匠の美学なのかもしれない。しかし、神は残酷なことするね。

【山本】ほんとですね。

<『立川談志を聴け』の著者・山本益博氏、特別対談のお知らせ
立川談志1周忌追悼プロジェクト「映画 立川談志」(松竹)の公開を記念して、山本益博氏と放送タレントの松尾貴史氏のトークイベントが行われます。
・日時:12月22日(土) 15:20頃~(13:30~の回 上映終了後)
・座席指定券:11月21日(水)発売
・場所/問い合わせ:東京 東劇(03-3541-2711)

スクリーンで観る高座 シネマ落語&ドキュメンタリー「映画 立川談志」
~読んでから観るか、観てから読むか!? ──天才談志の落語哲学 ~

・2012年12月8日(土)~東劇・なんばパークスシネマ先行上映
・2013年1月12日(土)全国公開

詳しくは 
http://cinemarakugo-danshi.blogspot.jp/