極めて危険な「成功事例分析」

成功している企業群を分析し、そこに共通する「成功要因」を抽出する、というのはよく用いられる手法です。

古くは、トム・ピーターズとロバート・ウォータマンが1982年に著した世界的ベストセラー“In Search of EXCELLENCE”(邦訳『エクセレント・カンパニー』)に定義された「超優良企業の8つの条件」が有名です。出版当時、戦略コンサルタントだった彼らは、「超優良企業」と見なした幾つかの企業の共通項、即ち、(1)行動の重視、(2)顧客に密着する、(3)自主性と企業家精神、(4)ひとを通じての生産性向上、(5)価値観に基づく実践、(6)基軸事業から離れない、(7)単純な組織・小さな本社、(8)厳しさと緩やかさの両面を同じに持つ、を抽出しました。

また、1994年にジェームズ・C.コリンズとジェリー・I. ポラスが著した“Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies”(邦訳『ビジョナリー・カンパニー』)に定義された「時代を超える生存の原則」では、(1)基本理念がなくてはならない、(2)進歩への意欲を常に維持しなければならない、(3)基本理念を維持し、進歩を促すための、一貫性がとれた組織でなければならない、といった共通項が抽出されています。

この手の成功事例分析は枚挙にいとまがありません。一方で、これらの称賛を浴びた企業群のその後を追うと、大きく明暗が分かれることもまた有名な話です。私は、これが「成功企業に共通する条件や原則」であること自身を否定するつもりは毛頭ありません。しかしながら、これをもって「成功するための条件や原則」と捉えることには懐疑的です。いや、この類の分析を鵜呑みにすることは極めて危険であるとすら考えています。