立教大学は、伝統的に英語教育に力を入れてきた大学の1つだ。なかでも、経営学部は「仕事で使える英語力向上」に熱心に取り組んでいる。その代表例が、TOEICテストで900点以上を獲得した学生を表彰する「クラブ900」である。2年前に導入した制度で、該当者には賞状、記念品やメダルが授与される。

経営学部国際経営学科の松本茂教授は説明する。

「700点や800点レベルの英語力で満足してもらっては困ります。できる学生たちにモチベーションを与えるために始めた制度です」

同学科に所属する1、2年生は年2回のTOEIC受験が必須で、3、4年生は希望者が受験する。国際経営学科に在籍する約560人のうち、900点を突破しているのは41人に上る。4年生の平均点は769点だ。もともと国内の高校を卒業した学生を前提としたカリキュラムなので、900点以上の「高得点者」のうち、を占め、帰国子女の割合は2割程度しかいないという。

同学科では専門科目の7割の授業を英語だけで行っている。専門の授業に関しては、TOEICで600点、650点、700点以上といった具合に、英語の習熟度別に3段階に分けて講義を行っている。

「TOEICは、英語で授業を受けるための語学力を証明する物差しとして活用しています。経営学部ではTOEIC対策の授業はしてません。『専門知識を活用しつつ、英語で議論ができ、問題を解決できる学生』の育成を目指しています」(松本教授)

単に「就職のための見せかけの英語力」を目指すというのではなく、本質的なコミュニケーション能力を高めようとしているという。企業人として外国人と英語で交渉ができるレベルにしておこう、という発想だ。

TOEIC「高得点者」の就職先には、日本IBMやパナソニック、ソフトバンク、NTTドコモ、三菱東京UFJ銀行、ソニー、丸紅など、著名企業がずらりと並んでいる。

松本教授は「日本企業の人事担当者の中には、専門科目を英語で学ぶことの意義をまだ理解していない方も少なくない」とも訴える。これからは「当たり前に英語を使いこなす新卒者」の必要性がますます高まるとみている。