調査概要/上場企業約3600社に対して質問紙の郵送による調査を実施、366社より回答を得た。調査期間は2011年2月14~23日。回答は広報担当または人事担当による。特に記載のない限り、グラフはこの調査結果をもとに作成。

武田薬品730点の衝撃

11年1月下旬、民間企業への就職を目指す大学生たちに衝撃が走った。製薬国内最大手の武田薬品工業が、2013年4月入社の新卒採用から、TOEICで730点以上の取得を応募条件にすることを明らかにしたのだ。

11年春卒業予定の大学生の就職内定率は77.4%(11年2月1日時点)で、未曾有の“就活難”の最中にある。しかも、大卒新入社員の平均点は460点程度とされている。著名企業がこれほどの高水準を“基準化”するのは極めて珍しい。

武田薬品だけではない。楽天、ファーストリテイリング、三菱ふそうトラック・バス、双日など、大手企業が続々と英語の公用語化を導入、もしくは検討している。「TOEIC860点以上」という高い語学力と専門性を持つ一部の新入社員を高額優遇する給与体系を取り入れた野村ホールディングスのような例もある。

私自身、英文記事執筆などの英語関連の仕事も長年続けており、「英語と企業」に関する取材も数多く手がけてきた。当然ながら業種や職種によって差異はあるし、英語をまったく必要としない仕事はまだ数多くあるにしても、企業のあらゆる現場で、「実践英語力」を求める声が日増しに高まっていると痛感している。

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新卒採用での英語能力考慮・TOEICスコアへの評価

アンケートの結果をご覧いただきたい。「新卒採用時に英語能力を考慮するか」との問いに対し36%が「している」と答えた。「今後予定している」との回答を合わせると過半数の51.4%に達している。

「英語力の判断基準は」の問いについては、「TOEIC」が122社と圧倒的多数を占めている。「評価できるTOEICの点数は」との問いについては、「730点以上」が73社にまで及んでいる。

足並みを揃えたかのような、TOEICを物差しとした新卒採用での英語重視志向。リクルートが運営する就職ポータルサイト「リクナビ」の岡崎仁美編集長は次のように説明する。

「求職者側には採用基準の明確化を求めるニーズがある。企業も厖大な応募者から厳選し、面接して採用しなければなりません。今は就職氷河期ですから、1社あたりの応募者も増えています。能力は英語力だけでは判断できませんが、TOEICは、効率的にしかも平等に基礎学力を測るという意味で、大学名とともにわかりやすい指標になっているのです」