以前、あるテレビ番組の企画で料理にかかる時間を調査したことがある。漫然とつくると1時間30分かかる献立は、時間配分を変えると50分でつくることができる。野菜を切ってゆでる、ハンバーグを捏ねて焼く、などの作業単位時間を正しく見積もり、自分が何もしなくてよい時間に他の作業を重ねていくことにより、短縮できるのである。仕事に置き換えれば、自分以外の人からのアウトプットを待っている時間に何をするのかを計画し、そのために他人へのお願いをどの程度前倒しでする必要があるかを綿密に計画することで、時間の使い方が大きく変わるということである。

図を拡大
一週間168時間を何にどのくらい使っているか把握が、あてはまるで約3倍

先ほど24時間の使い方を把握しているかという設問があったが、1週間という区切りで見ると、さらに大きな差が見られた。「1週間の168時間を何にどのくらい使っているか、おおよそ把握している」に「あてはまる」人が、1500万円以上では400万円台の3倍近くになっている。1日の時間を把握していれば、その足し算が1週間なのだが、話はそう単純ではなさそうだ。

「1週間のうちで、その曜日にやると決めていることがある」「1週間の曜日の使い方を、曜日により変えている」「1週間の前後半では違った使い方をしている」人が、1500万円以上だと、それぞれ2~7倍と差が顕著にあらわれた。もちろん定例会議等の外的要因によって規定される部分もあるが、自分の中でのメリハリと、仕事相手との関係性を考慮して自分で決められることも多い。

1日の中でも、思考力が鈍くなりがちな食事の後には単純作業でこなせる仕事をすると効率がいいように、1週間という時間枠の中でも、中だるみしそうな水曜は簡単に終わる仕事をまとめて片付けて早く帰り、木曜は集中して考える日と決める、というのがメリハリだ。また、取引先や社内の関係者がデスクにいることが多いから、月曜の午前中はアポの調整に充てるといったことは、相手を考えた曜日の使い分けの工夫といえる。

仕事時間の中でも、成果を出すべき時間は本当に限られている。一流はその貴重な瞬間に集中力を発揮できるよう準備を怠らない。極端な例をあげると、プロゴルファーの石川遼選手が2010年のシーズン中に試合でボールを打った時間はわずか16時間である。1年の総時間のわずか0.2%のために、練習、道具の手入れ、食事、睡眠などにあれこれと工夫しているのだ。また、試合中であっても集中力を維持するためのコツだけでなく、切れた集中力を取り戻すスイッチも持っているのだろう。