「ただの野菜直売所」が大繁盛のワケ

ちょっと面白い場所に足を運びました。それはJAよこすか葉山が運営する農産物直売所「すかなごっそ」です。一風変わった名前ですが、横須賀の「すか」、野菜の「な」、ごちそうを意味する「ごっそ」を合わせた造語だそうです。地元で採れた新鮮な野菜、そしてブランド牛である「葉山牛」の肉や加工品を販売している、いわゆる「道の駅」です。

買い物客で賑わう「すかなごっそ」。
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訪れたのは、日曜日の午前9時40分のこと。この店のオープンは9時半なので、開店直後にもかかわらず、すでに駐車場はほぼ満車状態です。そして店内は多くの人で溢れかえっています。

「しょせん、ただの野菜直売所でしょ」と甘く見ていた私としては、この混雑ぶりに素直に驚いてしまいました。周辺には元々あちこちに直売所はありましたから、新鮮な野菜を安く買えるという当たり前の理由だけでは、ここまでの繁盛ぶりは説明できません。では、何が彼らを惹きつけているのでしょうか?

最大のポイントは、このショップは「エンターテインメント」として機能しているということなのでしょう。いくら東京に隣接する神奈川県であっても、この地は日本全国のほとんどの「地方・郊外」と同じく、決して娯楽が豊富にあるわけではありません。そんな中、この直売所は貴重なエンターテインメント施設として認識されているのです。お年寄りも小さい子供も家族みんなで行ける、ちょっとした軽食(コロッケやらソフトクリームやら)を楽しめる、どれにしようかを迷う買い物のネタがあるなど、娯楽としての機能が散りばめられているのです。それを求めて、すぐそばに暮らす住民だけではなく、それなりに遠いところからも人がやってきているというわけです。

今回は、「商圏」という点に関して、少し考えてみたいと思います。そもそも「商圏」とは、ある店舗や施設を基準に考えたときに、「その店や施設に、お客を呼ぶことができる範囲」のことです。著作 『「お通し」はなぜ必ず出るのか』の中では、ラーメンや鮨、うなぎ、スイーツなど嗜好性の強いものは商圏が広く(=広い範囲から人を呼ぶことができ)、野菜のように日常に寄り添うものは商圏が狭い(=遠くからは人を呼べない)、と説明しました。このこと自体は決して間違ってはいないと思いますが、先ほどの農産物直売所の繁盛ぶりは、その「常識」をやや揺さぶるものです。野菜であれだけの人を呼ぶことができているのですから、商圏がそれなりに広いのは疑いようもない事実です。