2012年11月30日(金)

ゴマは炒ってからすると美味しくなる

プレジデントFamily 2011年9月号

大塚常好=構成 市来朋久=撮影 塩出尚子=撮影協力
先生:徳島文理大学人間生活学部人間生活学科教授 武田珠美

食卓に何かもう一品料理が欲しい。そんなとき、ホウレン草のゴマあえはナイスな副菜だ。存在は地味だけど、まさにいぶし銀の存在感。聞けば、ホウレン草以外にも、いんげん、オクラ、アスパラ、ゴボウ、小松菜など季節の野菜をゴマあえにすると美味しいそうだ。
 中国や韓国ではゴマのペーストやゴマ油を利用することが多いが、それらとは異なり、すりゴマを使うのは日本独特の食文化だとか。

 

――ゴマはすると、どのように変化するのですか?

 

ゴマをするのは、胚乳と子葉の油分をにじみ出させる意味がある。

先生ゴマの成分は、50%以上が油脂です。すり鉢を使ってすりつぶしていくと、最初はサラサラした粉状ですが、次第にしっとりとしてきます。長くすり続けるとペースト状になるんですよ。ゴマをすることで粒の周りを覆っている硬い部分を破壊すると、油分が遊離してきます。適度な油分が出てくることでゴマあえにしたときコクをもたらします。あまりすり時間が長すぎると、あぶらっこさが強くなりますが。またすったほうが消化も良くなり、ゴマの栄養分が体に吸収されやすくなります。

――ミキサーですりゴマを作るのと、すり鉢を使ってすりゴマを作るのとでは何か違いはありますか?

 

先生電動ミキサーはカッターでゴマを切ってゴマを細かくしていきます。すりつぶすのとは違い、長くミキサーにかけてもサラサラのまま。油脂は染み出てはきません。ゴマあえにする場合は、すり鉢とすりこぎを使ったほうが、野菜によくからまるのでいいですよ。

――粒状のゴマもすり鉢で長くすりつぶせばペーストができるのですね。子供に手伝わせて、ゴマの状態が変化するのを見せるといいですね。

 

先生すり鉢を使ってゴマを長い時間すり続けると、見かけは完全にペースト状になります。しかし、不思議なことに、顕微鏡で見ると粒子が大小さまざまで不均一なんです。けっして均一になることはないんですね。これが人がゴマあえを口に入れたときに美味しさを感じる一因になっているといわれているんですよ。だからゴマをするのにはすり鉢がおすすめなのです。

――今は市販されているすりゴマを買ってきて、家でゴマをすらない家庭も多いですが、やっぱりすり鉢ですったほうが美味しくなりそうですね。

 

先生その通りです! 洗いゴマ(炒る前の生の状態のゴマ)を、自宅で炒ると本当にいい香りがするんですよ~! 昭和20年代までは、みな洗いゴマを買ってきて、自宅で炒っていたんです。

――どんな香りですか?

 

先生複雑でうまく言えませんが、ゴマらしいいい香りです。ゴマは生の状態だと少し青臭いですが、炒ると香りが変化します。甘い香りのフラン類、ピーナッツのようなこうばしい香りのピラジン類など100種以上の成分によって作られているといわれています。フライパンで炒ると、ゴマに含まれる糖やアミノ酸の成分変化も加わって、香りが立ちのぼってきます。市販の炒りゴマを料理に使う場合でも、最初に数十秒間だけ、ゴマを温めてすると、ふだんよりずっといい香りのゴマあえになります。温めることでゴマの表面の皮の部分が柔らかくなるので、すりやすくもなります。温めるのは電子レンジなどよりフライパンでさっと弱火で温めるのがベストだと思います。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る