5度目の大勝負も40代、48歳のときでした。40代でひと勝負する、というのは19歳のときに決めたことですが、ブロードバンド参入だけでは、まだ少し勝負し足りなかったのです。会社の時価総額がやっと2兆円にまで復活した時期でしたが、私はそれで満足する男ではない。そこで、モバイルインターネットを何とかしてやろうと、2兆円全額使ってボーダフォンジャパンを買収したのです。ちなみにこの買収は、日本経済史史上、最大の現金による買収。世界的にも2番目の規模で、私の最後の大勝負にふさわしい賭けになりました。

しかし、ボーダフォンジャパンは決して業績の芳しい会社ではなかった。端末がダサいし、電波が悪くて電話はつながらない。営業は悪いし、ブランディングも弱い。まだナンバーポータビリティがはじまる前で、他社からボコボコにやられるだろうとみんなが言っていましたよ。でも、逆に言えばこの4点さえ改善すれば、逆転の可能性があるわけです。短所がわかっているのだから、直せばいい。

現在、iPhoneの人気も手伝ってソフトバンク携帯の純増契約数は過去2年連続1位に。ホワイトプランも好評で、白い犬のお父さんのCMも、好感度ランキング3年連続ナンバーワンです。電波の基地局もボーダフォンジャパン時代の2倍に増やして、98%の人の自宅でつながるようになりました。でも、99%つながるドコモさんやauさんに比べると、若干弱い。(※雑誌掲載当時)

ツイッターをやっていると、まだまだ「携帯電話なのに電話がつながらないとは何事だ」というお叱りを受けることがあります。それで、経営的に考えれば無謀なのですが、基地局をさらに倍にする「ソフトバンク電波改善宣言」を出しました。それでもつながらない残り1%のお宅や会社には、自宅用小型基地局「フェムト」をタダで提供します。モバイルインターネットを何とかしてやる、とはじめたことなのだから、これくらいしなくてはいけない。これが私の腹の底からの誠意です。

今回はツイッターで自分の会社に足りないことを気づかされたわけですが、人々の知識と知恵を合わせることで世界中が幸せになる、そういう時代が来ます。ツイッターはその先進的な例なのです。たとえば先日、ツイッターで「30年後の教育はどうあるべきでしょうか」と投げかけたら、一瞬で230件もの意見がツイートされました。文字だけじゃなく動画も、Ustreamのようにリアルタイムで公開できるようになり、世界中の人が一緒に情報共有できる時代がすぐそこまできています。それにともない、ものづくり産業で競争力を失ってしまった日本が、もう一度輝けるチャンスがあると思っています。

日本がものづくりにおいてコケたのは、テクノロジーの低下が問題ではありません。日本に比べて賃金や材料が安く、国内市場のボリュームも多い中国やインドに需要が移ってしまうのは、当たり前のことなのです。人口でも勝てない、価格でも勝てない日本がこれから競争力を持つとしたら、それは頭で勝負する分野でしかありえません。はじまったばかりのモバイルインターネットにこそ、可能性があるのです。携帯電話のユーザは、この10年間で7億人から50億人に増えました(※雑誌掲載当時)。モバイルインターネットのユーザは、これからも世界規模で増え続けるでしょう。ITの中心がパソコンからモバイルに移ることで、携帯が音声を中心とした携帯「電話」でなく、インターネットを中心とした携帯「インターネット」と呼ばれる時代が来ます。アジアは人口が多い、日本には優秀な頭脳がある。日本にとっては2つの面でチャンス到来というわけです。

50代になり、私のデジタル情報革命ももうすぐ完成の時期。60代になったら、計画どおり次の世代にバトンを渡します。