多くの人が見逃す変化に、違和感を抱けるか

私たちの仕事も似たところがあります。1時間単位で仕事をしている人は1時間先までしかリスクの意識が働かないし、1日単位で仕事をしている人は今日のリスク、1週間単位で仕事をしている人は今週のリスクしか察知できません。

図を拡大
リスクの意識が届く範囲は仕事のタームと比例する

空間軸でも同じです。仕事のタームが短い人は、リスク感性が身の回りにしか及びません。仕事のタームが長くなるにつれて、自チームや自組織、さらには周辺組織へとアンテナの届く範囲が広がっていきます。

現場に近いスタッフなら、1日から1週単位で、身の回りのリスクを察知できるレベルで十分でしょう。足元のリスクに対応できれば、ひとまず自分の身を守ることができるからです。

ただ、企業や組織のリーダーには、もっと広範囲に及ぶ感性が求められます。あなたがチームのリーダーなら1カ月から四半期先に潜むリスク、さらに組織の上流にいる経営トップなら四半期から1年先、3年先のリスクについて感じ取らなければなりません。

さもないと、チームや組織を危機に陥れたり大きなチャンスを逃すことになります。

アンテナの範囲を広げるには、普段から長いタームで仕事をとらえると同時に、リスクに対する感度を高めることが重要です。

3年先に業界の趨勢を変えてしまう大きな変化も、最初は微弱な兆候しか示しません。水面下では大きなうねりが起きつつあるのに、表面上はさざ波ほどの変化しかない。時代の変化とは、そういうものです。

3年先のリスクを感じ取るためには、そうした小さな変化を察知できる感性を磨いておく必要があります。

多くの人が見逃してしまう小さな変化に、「なにかおかしい」と違和感を抱けるかどうか。そこに優秀なリーダーとそうでないリーダーの差があるのです。

(※『ビジネススキル・イノベーション』第4章 感性でリスクを察知する(プレジデント社刊)より)

【関連記事】
なぜ、守りの時代に守りの姿勢でいることが危険なのか
新ビジネスのリスクをどう判断するか
組織と個人の価値創造を両立させるには
危機に直面しても頭を混乱させない
知識のゴミを捨てれば、答えは見える【3】
「難しい決断」を下すときの5つの心得