自分で会社を興して自由に羽ばたきたいと思うことがあります。仲間になってくれそうな優秀な友人も何人かいるのですが、事業をやっていくのに必要な素質とリーダーシップが私にあるだろうかと不安に思っています。ウマイル・マリク(パキスタン)


 

自由に羽ばたきたいという願望は、少しの間、忘れてください。友人のことも、素質やリーダーシップの問題も忘れてください。会社を始めるためには、何よりもまず、すばらしいアイデアが必要です。

こう申し上げたからといって、私たちはあなたを思いとどまらせたいわけでも、起業意欲にケチをつけたいわけでもありません。私たちにとって、ベンチャー企業を立ち上げる勇気のある人たちは、社会の最もすばらしいヒーローなのですから。

しかし、起業する前に、単なる願望と、さほどバラ色でない現実を分けて考えるのが、賢明です。

まず、「願望」から始めましょう。起業すればたしかに自分が大将になれますが、その選択はとりもなおさず、自分の自由と柔軟に行動する余地が何カ月間も、ときには何年間も減るということです。増えるのではなく、減るのです。

あなたの生活を、あなた自身がコントロールすることはできなくなります。あなたに代わって新しい事業がコントロールするようになるのです。つまるところ、顧客が2人しかいないときに、その顧客に月曜の午後5時に会おうと言われたら、いやとは言えません。顧客が3時間遅れでやってきても、ニッコリ笑って出迎えなければなりません。心の中では自由に羽ばたいているかもしれませんが、現実にはあなたは依然として命令を受けているのです。ただ、新しいボスからの命令に変わっただけなのです。

もう1つの願望は、起業は金銭的独立を与えてくれるという考えです。そうだったら、どんなにいいでしょう。しかし現実には、多額の自己資金を用意していないかぎり、ベンチャー企業の創業者ほど他人に金銭的に支配されている人はいません。

私の知っているある起業家は、個人の出資者やベンチャー・キャピタリストにこれ以上株を渡したくないと思ったがために、経営に行き詰まりました。

 「支配権を手放すだけでも十分嫌なことですが、株をどんどん手放していったら、私は息子の大学の卒業式にも今と同じ1994年型のホンダ・シビックで行くはめになる」と、この経営者は語りました。彼女の息子はまだ幼児なので、これは半分冗談として言った言葉ですが、実際、ベンチャー企業の創業者は、金持ちになる前にほぼ例外なく貧乏になります。

最後に挙げるのは、「やる気とエネルギーに満ちた数人の優秀な人間が集まるだけで、会社はつくれる」というよくある誤解です。もちろん、情熱と才能を備えた人材は、ベンチャー企業を離陸させる最も重要なカギですが、やはり最初にアイデアがなければどうにもなりません。

ベンチャー企業を成長に導くのは、市場のニーズを満たす製品やサービス、新しい市場をつくり出す製品やサービスなのです。