このほか、JCCPは、産油国との技術協力事業や、産油国キーパーソンの日本への招聘なども実施してきた。これらの活動を通じて日本について知識や親近感をもつにいたった人々が、中東諸国では、徐々に官産学の要職につき始めている。今回のシンポジウムでも、湾岸諸国の多くの参加者が、JCCPを知っているだけでなく、滞日経験ももっていることに驚かされた。

今回の湾岸諸国環境シンポジウムでもう一つ感じた点は、湾岸諸国のあいだで、水問題を中心にして、環境問題に対する危機感が急速に高まっていることである。とくに、主要な水源の一つである地下水が、人口増加や経済成長の影響(例えば、農業用水使用量の急増)を受け、枯渇や汚染の危機にさらされている問題は、日本では想像できないほど深刻である。今回のシンポジウムの会場において、水使用の合理化と廃水の再利用、地球温暖化による海面上昇が地下水に及ぼす影響、油田随伴水の処理と有効利用などをテーマにした日本の専門家の報告が大きな反響を呼んだのは、水問題に対して湾岸諸国が強い危機感をもっているからである。

前回クウェートを訪れたのは、ちょうど2年前の07年2月のことである。そのときには、クウェートを含む湾岸諸国が日本の石油精製・石油化学の技術力に期待していること、さらには雇用を創出するような日本メーカーの直接投資を切望していること、などが感得された。今回は、それらに加えて、湾岸諸国が、水問題をはじめとする環境問題に強い危機感をいだいており、その解決のために日本の技術力に期待していることが明らかになったのである。

06年現在で、石油は、日本の一次エネルギーの44%を占める。わが国は、原油をほぼ100%輸入しているが、その90%は中東産のものである(05年度実績)。中東諸国との良好な関係なしに日本のエネルギーセキュリティがありえないことは、誰の目にも明らかである。

06年に策定された日本政府の「新・国家エネルギー戦略」は、30年までに自主原油比率を40%にまで引き上げるという目標を掲げた。この目標を達成するためには、旧ソ連圏、アジア・太平洋、アフリカでの活動が有意義であることに、異論はない。しかし、その目標の成否を決定づける最も重要な地域が中東であることは、動かしがたい事実である。