そこに登場した異色の経営者が、リチャード・スピンクスというイギリス人起業家だ。彼こそはリアル版の「ビジネス新大陸」を歩く達人である。スピンクス氏は16歳でイギリスを離れ、40代半ばとなる今日まで世界をさすらいながらビジネスを展開してきた“国境なき起業家”である。その手法は、数年以内にEU加盟が予想される国に行って売上高利益率50%の荒稼ぎをして、その国がEUに加盟したら、次にEU入りしそうな国へと引っ越す、というパターンだ。

ウクライナに来る前はポーランドで、ロシアから輸入した安い魚を冷凍食品にしてスーパーなどに高く売り、大儲けをしていた。しかし、2004年にポーランドがEUに加盟したため、新たなビジネスチャンスを求めてウクライナにやってきた。そして私と同じく、農地が荒れ放題になっている状況に疑問を持ち、農民と話している間にリースなら可能だということ、つまり農民から土地をリースして自分で農業をすればよいということに気がついた。さっそく彼は、ある村で農民からリース契約を集め、その見返りとして学校や病院、消防署などをつくってあげた。すると、他の村の農民たちも同じことをやってほしいと頼みにきて、次々に自ら進んでリース契約にサインした。