恋愛小説20作品一覧

■死の棘 島尾敏雄著、新潮文庫
夫・トシオの浮気が発覚したのを機に、正気を失う妻・ミホ。憑かれたようにトシオの過去を暴き追いつめるミホと、ひたすら許しを求めるトシオの凄まじくも生々しい記録。

■センセイの鞄 川上弘美著、文春文庫
37歳のツキコは、行きつけの駅前の居酒屋で高校時代の教師と再会する。センセイは70代。年の差をよそに2人の交友は静かに少しずつ深まっていく。2001年、谷崎潤一郎賞受賞作。

■無銭優雅 山田詠美著、幻冬舎
42歳の慈雨と栄といういいオトナの2人が2人だけの甘く愛しい世界をつくりあげていく。他人が見れば失笑を誘うくらいのラブラブぶり。お金や体力はないのに、2人の恋が贅沢な訳は?

■コレラの時代の愛 ガルシア・マルケス著、木村榮一訳、新潮社
ひとりの女性への思いを胸にとどめ、独身を守ってきた男。夫を亡くしたばかりの彼女に、51年と9カ月4日、抱き続けた愛する気持ちを告げる。

■ガラテイア2.2 リチャード・パワーズ著、若島 正訳、みすず書房
人工知能「ヘレン」に文学を教え込むという奇抜なプロジェクトに、リチャード・パワーズは参加。開発が進むにつれ「ヘレン」は人格を持ち始め……。

■荒れた海辺 ジャン・ルネ・ユグナン著、荒木 亨訳、筑摩書房
妹への秘めた思いを抱く兄。数十年後、妹は兄にあてて手紙を送る。

■町でいちばんの美女 チャールズ・ブコウスキー著、青野 聰訳、新潮文庫
容姿ではなく、人格として認められることを欲するキャスは、醜くなろうとして自傷行為を繰り返すのだが……。

■蜜のあわれ 室生犀星著、小学館
金魚なのか少女なのか、よくわからない「あたい」と老作家が、互いに愛情を深め合う、超シュールな恋愛小説。

■それから 夏目漱石著、新潮文庫
職に就かず気ままな生活を送る代助。かつて恋心を抱いていたが、今は親友の妻である三千代を愛してしまう。

■荒地の恋 ねじめ正一著、文藝春秋
53歳のときに、友人(田村隆一)の妻と恋に落ちた詩人。荒地派の詩人、北村太郎と田村らの後半生を描く。

■好き好き大好き超愛してる 舞城王太郎著、講談社文庫
ゼロ年代デビューの作者が、大切な人の死を饒舌な文体で語りきる。

■草の花 福永武彦著、新潮文庫
「私」はサナトリウムで療養仲間の汐見と知り合う。汐見は自分が死んだら読んでくれと2冊の手帳を残していた。

■秘事 河野多惠子著、新潮文庫
三村清太郎、麻子はともに昭和11年生まれの仲睦まじい夫婦。清太郎が臨終のときに伝えたかった言葉とは?

■蹴りたい背中 綿矢りさ著、河出文庫
クラスになじめないハツと、同じくクラスで浮いた存在である、にな川との奇妙な交流。芥川賞受賞作。

■ボヴァリー夫人 ギュスターヴ・フローベール著、生島遼一訳、新潮文庫
田舎の医者と結婚したエマ。凡庸な夫との単調な生活に退屈し、虚栄と不倫に身を滅ぼす悲劇を描き出した名作。

■長いお別れ レイモンド・チャンドラー著、清水俊二訳、ハヤカワ文庫
フィリップ・マーロウは、資産家の娘である妻殺しの容疑をかけられたテリーを救うべく立ち上がる。

■ロリータ ウラジーミル・ナボコフ著、若島 正訳、新潮文庫
中年男の少女への倒錯した恋を描く。ミステリー、ロードノベルでもあり、時に笑いを、時に涙を誘う傑作。

■闇の左手 アーシュラ・K. ル・グィン著、小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫
惑星ゲセンに住む両性具有の異星人との交流は可能か? 交渉にあたるゲンリーは奇怪な陰謀の渦中へと……。

■愛人 ラマン マルグリット・デュラス著、清水 徹訳、河出文庫
仏領インドシナを舞台に、著者15歳のときの、金持ちの中国人青年との性愛経験をつづった自伝的作品。

■ジョヴァンニの部屋 ジェームズ・ボールドウィン著、大橋吉之輔訳、白水Uブックス
同性のジョヴァンニに恋をしてしまったデイヴィッド。歪んだ性を立ち切るべく、ヘラと結婚するのだが……。

(構成=草野 史 撮影=若杉憲司)