この広大な農地を耕すためにスピンクス氏は世界一大きいコンバインなど最新の農業機械を導入し、イギリス陸軍の兵士を900人雇用して連れてきた。兵士を雇った理由は、命令に従ってマニュアル通りの仕事をこなすから。つまり、決められた時期に決められた種や苗を植え、決められた肥料をやり、決められた期間に収穫し、戦車と似たような機械を動かす農作業には、兵士が一番向いているというわけだ。兵士のほうも、給料が同じならイラクやアフガニスタンに行くよりはウクライナで農業をしたほうが安全だということで、簡単に集まったそうだ。

彼の会社「ランドコム」は、どんな作物でも世界のどこよりも安くできる、というのが売りである。たとえば大豆なら、貨物船を1隻チャーターして黒海のオデッサの港から積み出す最低単位の3万トンまとまれば1トン=250ドル、すなわち1キロ=25セントで作ってあげるといっていた。たしかに破格である。スピンクス氏はウクライナの「農業王」になって、イギリスの取引所に上場するまでになった。まさに絵に描いたようなサクセス・ストーリーである。