いまどきの「悪い部屋」は、露天風呂が付いていない部屋を指すらしい。お値段は1人1泊4万5000円、2人で9万円! この高級旅館が満杯というのはすごいな、と驚いた次第だが、ここ2~3年は高い旅館から先に埋まっていくという状況が続いている。それが最近はさらに加速している感が強い。

要するに、日本人は“イソギンチャク性”を持っているのだ。世界に例がないほど貯蓄率が高く、1人平均3500万円持ったまま死んでいく国民だから、老後の心配がなければ使う。景気が回復してきた、と新聞が書くと、自分たちも何か買おう、旅行に出かけよう、という気になる。わけのわからない特需はそういう特異現象であり、それがある意味で日本の消費を支えている。

同じことは、おそらく5年前もできたはずだ。その頃から給料が上がっている人はほとんどいないからである。ただし、5年前はそういうムードがなかった。今はそういうムードになった。それだけの話である。逆に言えば、そういうムードが壊れたら、また消費はしぼんでしまう、ということだ。たとえば、このあと年金問題が紛糾して老後が心配になったら、国民の財布の紐は固くなるに違いない。何となく周りの様子が緩んできたらフワッと開いて、指を1本突っ込まれるとすぐに閉じてしまうイソギンチャク。それが日本人(とくに高齢者)の特性なのである。