たとえ夫婦で健康に老後を送ったとしても、厳しい生活であることに変わりはない。総務省の家計調査(08年)では、高齢者世帯で世帯主が無職の場合、生活費が足りないために、月平均で4万1000円ほどを預貯金から崩し、使っていることが明らかになった。このペースでいくと年間で50万円近くなり、20年で1000万円が消えていく。生活費にこれだけの額が上乗せされると、まかなうことができる人は一層、少なくなる。困ったことに、平均寿命がさらに延びることが考えられる。厳しすぎる老後になるのだ。

これで公的年金が救いになればいいのだが、それもまた期待ができない。

「大企業に長く勤務し、運よく定年を迎えたとしても、受け取る年金(この場合は厚生年金)の額は年間で200万円台が多い。これに企業年金が100万円ほど加算されて、年間300万円台の額を受給できれば相当に恵まれた身。だが、今後はその数も確実に減っていく。特に40代は減額が予想される」

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45歳でリストラされたら7500万円の損失

例えば、図は60歳の定年まで勤務した人と、45歳でリストラになり、退職金(600万円)を受け取り退職した人の老後も含めたシミュレーションである。

前者は定年まで年収800万円をなんとか維持し、2000万円の退職金を受け取る。老後は、年金が年間225万円。一方で、後者は非正社員として年収450万円で60歳まで働く。その場合の老後は、年金は年間で192万円となる。双方とも決して生活は安泰といえないが、とりわけ40代でリストラになると、生活が苦しくなるのがわかるだろう。

多少は景気が良くなりつつあるようだが、今後、企業も国も低成長が長く続くことには変わりない。悪条件がこれだけそろうと、どうやら、“高齢難民”になる人が増えるのは避けられそうにない。少なくとも物価などが高い首都圏で生活を続けることは難しく、地方に行かざるをえない人は増えるだろう。それでも生活が苦しいことに変わりない。

とはいえ、生活保護を受けることは様々な制約があり、簡単ではない。財政難もあり、今後、そのハードルは高くなる。藤川氏は締めくくった。「いまの40~50代で、死ぬまで働かざるをえない人は間違いなく増えてくるだろう」。

※すべて雑誌掲載当時

(撮影=坂井 和)
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