2012年11月1日(木)

ご存知ですか?グルコサミン
鳥取大学農学部南三郎教授に聞く、グルコサミンの働き

ノンフィクション・ライター 山田清機=文・撮影

グルコサミンって関節の痛みに効くって聞いたことがあるけれど、健康食品って本当に効果があるのかどうかよくわらない……。こんな人が多いのではないだろうか。

健康食品は医薬品と違って、身体の特定の部位に対する効能を謳うことができない。それだけに消費者にとっては、理解しづらい点が多いのは事実だ。

10月9日、JR大阪駅にほど近いアサヒグループの「アサヒ ラボ・ガーデン」で開催された「ご存じですか? グルコサミン」と題するセミナーでは、グルコサミンの驚異的な効能が、数々のこれまた驚異的な実験データや映像によって紹介された。

講師を務めた鳥取大学獣医学科の南三郎教授。「グルコサミンを飲んで、大阪も元気を出しましょう」

講師は、鳥取大学農学部で獣医外科学を教える南三郎教授。南教授はキチンやキトサンなどの天然資源を動物医療に応用する、ユニークな研究で知られる。キチンからつくられるグルコサミンに関しては、もちろん日本を代表する権威である。

ちなみに、アサヒビールを傘下に持つアサヒグループホールディングスの「アサヒラボ・ガーデン」は、食と健康をテーマにした情報発信拠点として、さまざまなセミナーを開催する他、お酒や食に関する蔵書を一般に公開するなど地域に開かれた活動を行っている。

この日のセミナーには杖をついた高齢者の参加者の姿も見られ、グルコサミンに対して切実な関心を寄せている方が集まっているようだった。果たして、グルコサミンとはどのような物質で、何に対して効果があるのだろうか。

わずか2ヶ月で走れるようになった
ラブラドールレトリーバー

まず、グルコサミンの効果を実証する映像として南教授が見せて下さったのが、生後7ヶ月のラブラドールレトリーバーの治療記録である。

股関節形成不全(股関節が完全に出来上がっていないために亜脱臼の状態にある)という病気を抱えて生まれてきたこの犬は、歩こうとするたびに激しい疼痛に襲われているようで、数歩しか歩くことができなかった。外科的な手術によって治療することもできたが、数10万円の手術費用がかかってしまう。手術するかどうか迷っている飼い主に向かって、南教授はこう提案した。

「私はグルコサミンの研究をしていますが、明確な効果があるかどうかはまだわかりません。費用はかかりませんから、とりあえず試してみませんか」

南教授は飼い主の了解を得ると、1日あたり1グラムのグルコサミンとコラーゲンペプチドを経口投与する治療を開始した。すると、わずか3~4日で減退していた食欲が回復し、1週間後には歩行が可能になり、なんと2ヶ月後には疾走できるようになってしまったのである。

その一部始終を収めたビデオを見たが、後ろ足をつくことさえできなかった犬が全力で走り回る様子は、まさに奇跡としか言いようがない。南教授自身にとっても、「信じられない効果」だったという。

では、このグルコサミンとはいったい何者なのだろうか? カニの甲羅からつくられるという話は聞いたことがあるが、ならばカニの甲羅を砕いて食べれば同じ効果が得られるのかといえば、そうではないらしい。

グルコサミンは、カニの甲羅の構成成分であるキチンを塩酸で分解することによって得られる。キチンは、その90%以上がアセチルグルコサミンが連なった高分子であり、グルコサミンと比較するとアセチルグルコサミンは摂取してもほとんど体内に吸収されない。ところがキチンを塩酸で分解してやると、グルコサミンが得られ、その物質は血液中や細胞中に吸収されやすくなる。これがグルコサミンだ。

「グルコサミンとは、キチンという天然資源を工場で精製・分解してつくるものです。グルコサミンが含まれていると言われる食べ物を食べても、グルコサミンが単独で体に吸収されることはないのです」

つまり、普通の食事をしていて自然にグルコサミンが摂取できることはないわけだ。グルコサミンのサプリメントが数多く販売されている理由はそこにある。

では、グルコサミンはいったいどのようなメカニズムで、何に対して効果を発揮するのだろうか。

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