このツケへの対処法には、2つある。

1つは、成果の評価に、目標の達成度だけではなく、目標の重要度や困難度を反映させ、総合的に評価することである。図表2は、目標設定理論の主唱者ロック(Locke, E.A.)が、A~D4つの目標の重要度、困難度および達成度によって成果を総合的に評価する方法を示したものである。目標Aの「重要度」は10点尺度で10(もっとも重要)、「困難度」は10点尺度で8(かなり難しい)、達成度は0.90(90%)で、これらの積72.00が目標Aの成果得点になる。同じ方法で、残りのB~D目標についても成果得点を出すことができ、それらを合計して「総合成果得点」を算出すれば、期間内のその部下の成果の総合評価とみることができる。

  このように、目標の達成度だけでなく、目標の重要度、困難度も加味して成果を評価すれば、達成度だけで評価した場合とかなり違った評価が出てくることがある。例えば、目標Cの達成度は0.50、目標Dは0.80で、目標Dのほうが高い。しかし目標Dの重要度、困難度はともに目標Cより低く、成果得点でみると、目標Cは20.00、目標Dは4.80で、目標Cのほうがはるかに高い。A~D4つの目標は、それぞれ違った4人の部下の目標と考えれば、成果の総合評価に基づき部下間の比較も可能である。ただしこの方法を使うためには、目標の重要度や困難度について、あらかじめ部下と十分に話し合い、合意に達していなければならない。

このように、目標の達成度だけではなく、重要度、困難度を加味することで、成果がより多面的かつ公正に評価され、部下への納得性が高まる。と同時に「従業員がやさしい目標しか設定しない」という成果主義人事制度の汚名をそそぐことができよう。

いま一つの対処法は、チーム目標の活用である。わが国で成果主義人事制度がうまくいかない原因の1つは、もともとチームや集団で仕事をすることが得意な日本人に、いきなり欧米流の極端に個人中心的な人事制度を導入したことにある。その是正策としてチーム目標制度の導入が考えられるが、紙幅の関係でここでは詳述できない。他の文献(注2)やプレジデント誌別号の拙稿(注3)を参照ねがいたい。