2012年11月9日(金)

キノコは冷凍するとおいしくなります

プレジデントFamily 2011年1月号

長山清子=構成、撮影協力 市来朋久=撮影
先生:女子栄養大学教授 青柳康夫
――それにしても、なぜ冷凍で旨味成分が増えるのですか。

 

先生それはキノコの細胞にある水分が凍ることで体積が膨張し、細胞膜が破れて細胞が死ぬことで、旨味成分のもとがたくさんできるからです。

もともと生のキノコには旨味成分がほとんどありません。加熱することでキノコの細胞が死んでしまうと、キノコの細胞に含まれているRNAという核酸が、同じく細胞に含まれているヌクレアーゼという酵素によって分解されて旨味成分に変わります。細胞にはさまざまな酵素があるのですが、生きている細胞の中の酵素は勝手に働きません。しかし細胞が死んだ時点で酵素が活動を始めるんです。

――海の中に生えている昆布のダシが出てしまわないのは、「生きているから」だそうですが、それと同じですね。

 

先生そうです。冷凍したキノコを煮ると、すぐに旨味をつくる酵素が働きだします。生のキノコを加熱する場合には、加熱の途中で細胞が徐々に死んでいくからあまり旨味が増えないけれど、冷凍したものを加熱する場合は、すでに冷凍した時点で細胞にダメージを与えているわけですから、全体が一斉に旨味をつくりだす。だから冷凍したキノコは、生のキノコに比べて旨味成分が多いのです。
ところがキノコには、せっかくできた旨味を分解してしまう酵素もあるんです。干しシイタケを長い時間戻しすぎると、旨味がすっかり消えてしまうことがあるでしょう。

――ああ、あれは酵素のしわざなんですか。

 

先生そう、でもこの旨味成分を分解する酵素は温度が50~60度くらいになると、失活といって、ほとんど働かなくなる。それに対して旨味をつくる酵素のほうは、90~100度近くまで活性が続いていく。ということは、加熱していくと旨味を分解する酵素のほうが先に失活する。したがって70度くらいになると、旨味をつくる酵素はまだ生き延びているから、そこで旨味が増えます。
ですからキノコというのは、ゆっくり煮ていかないと旨味が増えないんです。いきなり100度近いお湯に入れたり、ワット数の高い電子レンジで一気に加熱したりしてもあまり旨味は増えません。

――なるほど。ひょっとして干しシイタケをつくるのは、冷凍と同じ理由ですか?

 

先生そのとおり。干すことで細胞にダメージを与えています。でも干しシイタケをつくるのは天気のいい日じゃないと無理ですが、冷凍はいつでもできますよね。家庭で冷凍するときは、加熱後すぐ食べられるように切っておいて、冷凍庫で一晩おけば十分です。

 

結論:冷凍すると細胞膜が破れ、旨味も香りも増えるんです

 

食べものは冷凍すると味が落ちるという先入観を覆す冷凍キノコのすすめ。キノコの旬である、この季節にたくさん買って、冷凍庫に常備しておくと便利だ。

 


先生:青柳康夫/女子栄養大学教授
食品機能学が専門で、水で戻してとるだしの研究をしている。キノコは30年にわたって研究しており、キノコを冷凍することについては10年ほど前から取り組んでいる。キノコが旬の秋は毎年キノコ狩りで多忙に過ごす。

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