「こうやったらうまくいったから、今度もこうしよう」と誰だって思いますよね。冒頭で述べた「直感力」に頼る経営はこのケースに当てはまりがちです。

(PIXTA=写真)

たとえば、ダイエーの創業者・中内功氏は成功体験の中から背景にあるさまざまな事象を見出す目がありました。うまくいけばいくほど自分のやり方に自信をつけていく、これを「確証バイアス」――“成功体験の罠”といいますが、そんな確固たる自信と積み重ねのある人にとって、その前提が崩れたときが失敗のときです。中内氏の場合は、周囲の状況が大きく変化していたにもかかわらず、成功体験があることが“罠”になり、方向を修正できなくなってしまったのです。

人間は、自分のものの考え方や周囲に対する解釈を一貫させるため、例外が起こらないように考えを修正してしまいます。だから、間違いに気づかない。そのため、成功者は「成功している自分は失敗してはならない」と考えがちです。それ自体は悪いことではないのですが、そう考えがちになる自分がいることを認知しておくことが大切です。

「クールマインド・ホットハート」という言葉があります。新しいものを発見し、偶然の一致にいろいろな意味を見出そうとする前向きな動機づけを行うハートと、そこで生じる思考のバイアスを冷静に意識するマインドを持とう、という意味です。

このように、自分自身の心の動きを自分で認知し、よりよく制御しようという考え方は、心理学では「メタ認知」と呼ばれます。こうしたハートとマインドをバランスよく共存させうる人が、成功者になりうるのではないでしょうか。

(構成=相馬留美 撮影=和田佳久 写真=PIXTA)
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