──環境技術を持っていることは世界市場での優位性につながるか。
三菱自動車工業社長 
益子修氏

益子 いまや新興国でも環境問題は避けて通れません。ここで勝つためには、他社に負けない環境技術を持たなければならないのです。当社はEVの先発であり、その技術を有しているということは、新興国においての当社のブランド価値を高めていると認識しています。

──エコカー戦略はEVを頂点技術とする形で、臨んでいくのか。

益子 その通りです。13年1月にPHVを出しますが、EV「i-MiEV」の技術がベースにあるから開発できた。タイで生産する低燃費なコンパクトカー「ミラージュ」の回生電力にしても同様です。当社はHV以外は、ほとんどの環境技術を持っています(HVも2014年に発売予定)。したがって、先進国、新興国とも、それぞれの国の要求や規制、特性に応じて、エコカーの展開が可能なのです。

──ただし、EVはそれほど売れていない(6月までの累計販売は、国内9400台、海外1万8400台)。また日本では原子力発電による深夜電力を利用するという側面もあった。

益子 環境意識の高い消費者の多い欧州市場が、経済危機により低迷したことがEVが伸びない主因です。しかし、低迷が永劫に続くわけではありません。欧州はEVの魅力的な市場として復活していく。

また、国内ですが、確かにCO2削減のため原発による深夜電力を充電に使おうとする狙いはあった。しかし、原発の稼働率が落ちたいまでも、深夜電力を利用して電力利用を平準化するのに、EVは有効です。災害時の蓄電として、さらに電気をためる社会インフラとしても期待されています。国によっては、送電線の敷設がなくとも、EVにより発電、蓄電、放電もできる。電力政策そのものを変えられます。

──価格がどうしても高いのでは。

益子 EV用電池の値段は、かつての半分以下になっているのに、性能は上がっている。だから、EVは安くなっていきます。三菱自工は、GSユアサ製だけではなく、東芝製も使っていて、自分たちの車に合ったものを採用していきます。