アップルの隆盛により台湾企業も躍進を遂げた

近頃はOEMやEMSのみならず、「設計、デザインまでお手伝いしましょう」というODM(発注元のブランドで製品を設計・生産すること)が増えていて、スマートフォンなど複雑なIT機器は鴻海やASUS、HTCなどの台湾のエレクトロニクスメーカーに頼まないとすぐにはできない状況になっている。唯一の例外は韓国のサムスンだろう。

今、技術的にも世界最先端の製品を世界最速で世に送り出しているのは台湾企業だ。注文を入れてから市場に出るまで数カ月。開発期間が最短9カ月、下手をすれば1年後の発売を目指して製品作りをしている日本企業ではとても太刀打ちできない。

だからiPhone4、4S、5と次々と市場に新製品を投入しているアップルは鴻海以外に注文を出さない。鴻海にしてもアップルへの依存度が50%になっている。

iPhoneを分解してみれば心臓部の半導体チップはTSMC製だし、ハードは鴻海製である。今夏、アップルの株価が過去最高を更新、1990年のマイクロソフトの記録を抜いて時価総額50兆円になったと報じられたが、アップルの隆盛によって台湾企業も躍進を遂げてきたといえる。TSMCの時価総額はルネサスの60倍にもなっており、いくらアメリカ投資ファンドKKRが買収したといっても今後の投資競争に立ち向かう体力は残っていないだろう。

日本企業は研究開発から製造、販売までのワンセットで単品のヒット商品を生み出すビジネスにこだわってきた。自社ブランドでラジオを作り、テレビを作り、カメラを作り、ウォークマンを作り、そしてDVDプレーヤーやビデオカメラを作ってきた。

しかし、長年、手塩にかけて開発してきたそれらの製品は、今やすべてスマートフォンのアプリになり、アイコンに収まる時代になってしまった。日本が何か素晴らしい製品を開発しても、半年から数年後にはスマホのアイコンになっているのだ。

もはやWiiやDS、PSPなどのゲームソフトはスマホに取り込まれ、スマホに載らないゲームは人がプレーしなくなりつつある。あえてコンソールマシンを買わない時代なのだ。