そのような製品中心の発想から抜け出すには、「マーケティング近視眼」という論文で著名なレビットの考えが非常に参考になるだろう。

レビットは「マーケティング近視眼を避けよ」と説いている。その意味するところは事業を製品で定義するのではなく、その製品が果たす機能で定義せよ。すなわち消費者中心の発想をせよ、ということだ。

例えば4分の1インチのドリルが売れたとしよう。そのとき、その消費者が欲しかったものは何だろうか? そこで多くの人は「ドリルが欲しかったのだろう」と考える。しかし、消費者が本当に欲しかったのはドリルではなく、そのドリルで開ける「4分の1インチの穴」なのだ。

このように消費者ニーズを誤解して製品をつくっていると、新しい技術が世に登場したときにマーケットを一気に失ってしまう。実際、米国の鉄道会社が凋落したのは自らの事業を輸送と定義せず、鉄道と定義したためだ。そうレビットは警鐘を鳴らす。

米国の企業には、このようなレビット流の考えを採用しているところが多い。IBMは昔から「I BM means service」と言い、ゼロックスは「コピー機を売るのではなく、コピーサービスを売るのだ」と言い続けている。

顧客は機械が欲しくて機械を買っているわけではないため、顧客が機械を買う目的に注目しなければならないというわけだ。米国で残っている世界的メーカーは、まさにレビット流の視点を持ち合わせているといえよう。