「社内の飲み会で、私の目を見ながら、私が以前勤めていた会社の名を挙げて、『B社の野郎が職場を汚している』と“ゴミ扱い”したんです。私に対してだけそう。きっと異分子が嫌いなんだろうなあ、と思いました」

後で、「あの人にあれこれ言われて病気になった人もいる」と、産業医が教えてくれたという。

昨年、親会社のリストラが終わり、高梨さんの職場にもそのお鉢が回ってきた。対象はヒラ社員だけのはずだったが、係長クラスの高梨さんが呼び出された。

「毎週金曜日の午後、会議室で部長、人事課長と1対2で面接。『君は生産性がないから辞めて』などと言われました」

高梨さんは突っ張った。

「プロジェクトが赤字を出した。辞めろ」

「あなた(部長)の企画なんだから、あなたが辞めればいいじゃないですか」等々、感情的なやり取りが1カ月の間続いた。

「ああ言えばこう言う。しまいには向こうが説得の言葉をなくして、『うーん……』と唸ったまま黙ってしまった。『理にかなってなければすみません』と丁寧に言ったけど、フォローになってませんよね(笑)。人事課長は、私とは目も合わせなくなりました」

リストラは免れたものの、またもや異動。「高梨には仕事を出すな」とのお触れが出て、“社内プー”状態に陥ったという。

しかし高梨さんには、高梨さんしか理解する者のいない電子機器に関する知識があった。国ごとに規格の違いがあって、理解するには複雑かつ英語力が必須。代わりの担当者が、パニックに陥って辞めたほど煩雑なものだという。

「ほかの子がわからなくて聞きにきても、『部長に許可取ってから来てください』と追い返して泣かせちゃいました。当時はやさぐれてましたからねえ」

ほどなくして休職した。現在、転職先を物色中である。

「意味なくここにいてもしょうがないですから。次が決まるまで休むことにして、心療内科で診断書を貰いました。ただの偏頭痛だから、必ずしも心療内科で診てもらう必要はないんですが、こうすれば周りは『ああ、そっち(うつ病)か』と誤解してくれるから」

あと数カ月で休職1年が経つ。強制的に退社となるという。

早く次を見つけねばならない。が、書類選考の段階で20社以上に落とされ、面接にこぎつけた5社も全部落ちた。

「私、性格悪い(苦笑)。気づかないところで上司のプライドをバッサリやっちまってたと思います」

でも、私は他人に悪口は言いますけど、陰口は言いませんよ――笑みは絶やさない。焦っているのか、開き直っているのか……。

※すべて雑誌掲載当時

(初沢亜利=撮影)
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