山口康寿氏が「指示書」を添削!

×BEFORE

(1)チェーンストアの現場では、従業員が全部の文書を読むことを前提に情報を伝達することはない。最初の一文が抽象的では他の個所は読まれない。

(2)目標額到達や作業スピードのほとんどが読めている場合を除き、具体的な数値や期限を設けると、目先の利益にとらわれる結果になる。

(3)要点を絞らず、長々と文章を続けるのは相手の立場を考えていない証拠。従業員の業務を想像すれば、おのずと不必要な用語や表現が理解できるはず。

(4)お客の立場や、店の状況によってかけるべき声は変わってくる。「必ず」声をかけることで、顧客の心は離れていく。

AFTER

(1)はじめに結論を書く
指示を伝えるときの大原則。論理の展開を解きほぐすのではなく、先に書く。いくつかの外資系企業の経営者を経験したが、英文の語順のように重要な順で、相手に説明をすることが大切。

(2)号令、命令、訓令を使い分ける
従業員の立場に立って、権限をどこまで与えるかに経営者の資質が問われる。一挙手一投足まで指図するのではなく、一定程度の裁量を与え、お客様の要望に柔軟に対応することで、リスクが大幅に軽減できる。

(3)要素はシンプルに3つまで
人間の理解能力には限界がある。たとえ書き漏らすことがあっても、要素は3つに絞る。しかもそのうちのいくつかは、相手が知っていることを入れないと、人間の脳は拒否反応を示す。

(4)文字は少なく写真を大きく
世の中には、文書を読むのが得意でない人間もいる。相手の立場に立って文書は作成すべき。お客様に対しても同様。店内の表示もなるべく文字を減らし、記号のみで完結するのがベストだ。

ミニット・アジア・パシフィック副会長 山口康寿(やまぐち・こうじゅ)
1946年、東京都生まれ。68年慶應義塾大学経済学部卒。71年ユニー入社。98年ミニット・ジャパン(現ミニット・アジア・パシフィック)社長。2010年7月より現職。
(面澤淳市=構成 小倉健一=事例作成 小原孝博=撮影)
【関連記事】
刺さるビジネス文「上司がすべきたったひとつのこと」
伝達センスを磨く「朝5分」ケータイメール習慣
<経営者目線の提案書>行間に「覚悟」と「知恵」が滲み出ているか -ブリヂストン会長 荒川詔四氏
「私、文章が書けないんです」を救う「脱抑制」のプロセス
誰でもビジネス作家デビューできるコツ、教えます