アメリカでも日本でも、近い将来、労働力不足が予測されている。市場価値の高い人材は、放っておけばより条件のいい会社に行くだろう。会社の将来を担う優秀な社員に「見捨てられ」ないようにするためには。

2000年の労働統計局の報告によると、アメリカでは10年には──ベビーブーム世代の引退や25~34歳の労働者の減少などの要因があいまって──労働者が1000万人も不足する事態になりかねないのである。

オンライン就職斡旋サイト、モンスターの設立者、ジェフ・テイラーは言う。「今後5年以内に、われわれはかつて経験したことがないほどの労働力不足に直面するだろう」。

多くの専門家がテイラーと同じく、近い将来、労働力が不足すると見ている。そしてそのときには、一部の企業──とりわけ、企業の生き残りにとって一見もっと緊急性が高そうな問題を優先して、社員の満足度やリテンション(優秀な社員を会社に繋ぎ止めること)を後回しにしていた企業──にとって、その影響は深刻なものとなるだろう。

シカゴの就職斡旋会社、チャレンジャー・グレイ&クリスマスのCEO、ジョン・A・チャレンジャーは、「リストラを免れた人たちでも、士気は明らかに低下している。(アメリカの労働者に対する)最近の調査では回答者の34%が、景気が回復したら転職するつもりだと答えている」と指摘する。それに加えて、03年8月のアクセンチュアの調査では、調査対象となったアメリカの中間管理職の48%が、転職先を探している、もしくは景気が回復したら探すつもりだと答えている。

リテンションのカギは、社員の個人的な野心(キャリア開発、功績の認知、報酬など)と、こんな会社になってほしいという彼らの期待の両方を考慮に入れた戦略にある。