2012年10月6日(土)

家康から学んだ「部下の力を活かす」我慢の心 -三菱地所会長 木村惠司氏

一歩踏み出す勇気、力が湧く知恵【9】強い組織づくり

PRESIDENT 2010年8月30日号

梶山寿子=構成 二石友希=撮影
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学生時代から本を読むのが好きで、特に浪人時代は、勉強に飽きると谷崎潤一郎や三島由紀夫の小説を読んでいた。社会人になってからは歴史ものに興味を持ったが、最近人気の幕末ものではなく、私が心惹かれたのは戦国時代を描いた本である。

三菱地所会長
木村惠司

1947年、埼玉県生まれ。県立浦和高校、東京大学経済学部卒。70年三菱地所入社。96年秘書部長、2000年取締役企画本部経営企画部長、03年常務執行役員、04年専務執行役員兼ロイヤルパークホテルズアンドリゾーツ社長。05年社長、11年4月より現職。

「戦国武将のなかで、誰がいちばん好きか」と問われたら、迷わずに徳川家康の名をあげたい。徳川家康を主人公にした戦記物はたくさんあるが、得るところが大きかったのは、家康という人物を掘り下げた、司馬遼太郎の『覇王の家』である。24、5歳のときに読んだ本だが、ビジネスパーソンとして、また人の上に立つ者として大事なことを学んだと感じている。

特に参考になったのが、「部下を大切にする」という家康の姿勢である。たとえば、部下が何か意見を言ったとき、トップがそれを言下に否定してしまうと、他の部下たちも萎縮して、自分の言いたいことをのみこんでしまう。それが有能な部下のアイデアの芽をつんでしまうと考えた家康は、どんなときも辛抱強く部下の話を聞いたというのだ。

織田信長も豊臣秀吉も、「時代を変えた」という意味で後世に名を残した。だが、人をまとめる、組織をマネジメントするという面では、信長も秀吉も、家康には及ばなかったのではないか。

家康に対しては、狡猾な「狸ジジイ」のイメージが根強い。人を騙し、策を弄して天下を制したといわれるが、人間をうまく育てたり、部下の力を活かすことに長けた彼の人間力こそが、天下統一を成し遂げた要因ではないかと、私は考えている。

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