マッキンゼー式インターン制度

採用方法もいろいろ工夫しました。論理性を見るためのクリティカル・シンキングテストを導入したり。

今でいうところのインターン制度も編み出しました。春休みと夏休みの2週間を利用して、「皆さん、我が社で働きませんか」と学生に声をかけるんです。

言葉は悪いですけど、優秀な人材を寄せるには報酬は高いほうがいいということで、当時、2週間で8~10万円のアルバイト代を用意していました。

そんな高給で何をやらせるかといえば、「A社がマーケットシェア1位になった理由は何か」「1位だったB社が2位に落ちたのはなぜか」といったテーマを与えて、考えてもらう。いわばリサーチャーの真似事をさせるわけです。

多いときで最大12人雇って、2人ずつの6チームに分けて、ある事例について調査させる。彼らが出してくる程度の答えなら私たちは知識として持っていますから、直接ビジネスにはつながりません。でも、実際に調べた数字やチャートはデータとして残るので、それなりに使い道がある。

一方でそういうリサーチャー的な作業を通じて、優秀な人材を選別して採用につなげることができる。そこが狙いです。

土日はレクリエーションデーということで、アルバイト連中を三浦半島のシーボニアにある大前さんの別荘に連れていきました。皆、平日は朝の9時から夜は11時くらいまで仕事をしていますから、土日はお楽しみでヨットに乗ったり、バーベキューをやるんです。すると「マッキンゼーの仕事って大変だけど、面白いぞ」って学生は思うから、「うちの会社(の就職試験)、受けろよ」と声をかけると、皆受けるんです。「給料も高そうだし」という感じで。

このプログラムを導入してから毎回500人くらいのオーダーで試験を受けにくるようになりました。そこから厳選して選ぶ。

採用の仕方に関しては、大前さんはわりと「自由にやったらいいよ」というスタンスでしたね。シーボニアに学生を連れて行くアイデアもすごく喜んでくれて、「それはいい考えだ」って。

ただし、別荘を使わせてもらう以上、使い終わったらピカピカにしておかないと後で嫌味を言われるに決まっている(笑)。「こういうことが大事やねん」とか何とか言いながら、アルバイトの学生に徹底的にメンテナンスさせましたよ。

私自身にとっても、このプログラムに携わったおかげで、マッキンゼーに入る入らないにかかわらず、非常に優秀でアスピレーション(向上心)が高い人たちと知りあうことができました。そういう人たちとの交流は今でも続いています。

次回は「後輩が語る"マッキンゼー青春の日々" (4)—厳しい師匠・大前研一の魅力」。10月8日更新予定。
 

(フォアサイト・アンド・カンパニー代表取締役、ビジネス・ブレークスルー大学・大学院教授 斎藤顯一=談/小川 剛=インタビュー・構成)